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心地よい空間は”音”がカギ。音環境心理で快適性やストレス軽減する方法を解説

2025.10.24 空調機器活用ノウハウ

心地よい空間は"音"がカギ。音環境心理で快適性やストレス軽減する方法を解説

カフェで流れるBGMが心地よく感じたり、工事現場の音が耳障りに感じたり、私たちは日々さまざまな「音」に囲まれて生活しています。

視覚や触覚と同じように、音もまた私たちの感情や集中力、ひいては心身の健康にまで深く影響を及ぼしていることはご存知でしょうか?

「なんとなく落ち着かない」「なぜか集中できない」と感じるその空間も、実は「音」が大きく関係しているかもしれません。

この記事では、音環境心理という音と人間の心理の関係を解き明かす学問を基に心地よい空間をデザインするためのヒントを探ります。単なる騒音対策に留まらない、音の力を活用した快適性向上、ストレス軽減の方法を分かりやすく解説していきます。

音環境心理とは

音環境心理とは

音環境心理とは、音と人間の心理的・生理的反応との関係を探る学問分野です。

単に音の物理的な大きさだけでなく、その音が持つ意味や文脈が私たちの感情や行動にどのような影響を与えるかを科学的に解明し、より快適な空間作りに役立てることを目指します。

音が感情や行動に与える心理的影響

音は私たちの意識とは裏腹に感情や行動に深く、そして無意識に影響を及ぼします。

これは日常生活の中で私たちが経験する様々なシーンからも明らかですし、実は「音を止める」ことだけが解決策ではないケースも少なくありません。

集中力向上とリラックス効果の音

例えば、自然音(小川のせせらぎ、鳥のさえずり、風の音など)や特定の周波数を持つヒーリングミュージックは心を落ち着かせ、リラックス効果を高めることが知られています。

これは、副交感神経を優位にさせ、心拍数や血圧を穏やかにする作用があるためだと言われています。

また、適度なノイズ(ホワイトノイズやカフェのざわめきのような環境音)は逆に周囲の会話や突発的な騒音をマスキング(隠蔽)し、意識を特定の作業に集中させる効果があると言われています。

ストレスと不快感を引き起こす音

一方で交通騒音、隣室からの話し声、機械音など、不快に感じる音はストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促し、心拍数や血圧の上昇、不眠などの生理的ストレス反応を引き起こす可能性があります。

特に予測できない突発的な音や、自分がコントロールできないと感じる音はより強いストレス源となる傾向があります。

これは人間の生存本能として、危険を察知するために音に敏感に反応する側面があるため、現代社会の騒音は時に原始的な警告として脳に認識されてしまうのかもしれません。

不快な音環境が引き起こす問題と対策

不快な音環境が引き起こす問題と対策

不快な音環境は単なる一時的な不快感に留まらず、私たちの健康や日々のパフォーマンスに深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

その具体的な問題点と心理的側面から見た対策を深掘りし、何ができるのかを探ってみましょう。

騒音ストレスと健康リスク

日常的に騒音に晒されることは、私たちの心身に様々な悪影響を及ぼします。

これは現代社会における見過ごされがちな、しかし決して軽視できない健康リスクの一つだと認識すべきです。

慢性的なストレスと自律神経への影響

継続的な騒音は、知らず知らずのうちに私たちを慢性的なストレス状態に置きます。

これにより前述したストレスホルモンが分泌され続け、心拍や血圧、消化、睡眠など、体の様々な機能をコントロールする「自律神経」のバランスが乱れる可能性があります。

その結果、不眠、高血圧、消化不良、免疫力の低下といった様々な健康問題を引き起こすリスクを高めます。

実は「慣れた」と感じる騒音であっても、身体は無意識にストレス反応を起こしているため、長期的な影響は免れないとされています。

例えば、幹線道路沿いに住む人が最初は車の音に悩まされても、次第に気にならなくなることはよくありますが、身体は依然としてストレスを受けている可能性があるわけです。

認知機能・学習能力への影響

特に集中力を要する作業や学習環境において、騒音は私たちの認知機能に悪影響を及ぼします。

例えば、オフィスで読書や資料作成中に周囲の話し声や機械音が聞こえると、その内容を理解するのに時間がかかったり、誤読が増えたりすることがあります。

これは、脳が音の処理に多くのリソースを割かれ、本来の作業に集中しにくくなるためです。

心地よい音環境をデザインする方法

心地よい音環境をデザインする方法

音環境心理の知見を活かし、具体的な空間で「心地よい」と感じる音環境をデザインするためにはいくつかの実践的なアプローチがあります。

空間の目的や利用者に合わせて最適な音を選ぶことが、効果的な音環境デザインの第一歩です。

空間の目的に合わせた音の選択

オフィス、住宅、商業施設など、空間の目的によって最適な音環境は異なります。

例えば、活気を生み出したい場所と、静かに集中したい場所では、選ぶべき音が全く違ってくるわけです。

オフィス・学習空間で集中力を向上させる音

オフィスや学習空間では、集中力を高め、生産性を向上させる音環境が求められます。

ここでは、前述した「マスキング効果」を効果的に利用することが鍵となります。

具体的にはホワイトノイズやピンクノイズ、あるいはカフェのざわめきのような環境音(ブラウンノイズなど)を低音量で流すことで、周囲の話し声や物音をマスキングし、意識がそちらに向かうのを防ぎます。

これにより心理的なストレスを軽減し、目の前の作業に集中しやすくなる効果が期待できます。

ただし流す音が邪魔にならず、あくまで背景音として機能するような種類と音量を選ぶことが重要です。

個人の好みに合わせられるように、ノイズキャンセリングヘッドホンや耳栓の利用も選択肢として提供するのが現実的かもしれません。

効果的な音響設計とゾーニング

効果的な音響設計とゾーニング

物理的な音響設計と空間の用途に応じた「ゾーニング(区画分け)」は、快適な音環境を実現するための重要な要素です。

ただ音を流すだけでなく、空間そのものの音響特性を考慮に入れることが大切です。

吸音材・遮音材の活用

不必要な音の反響を抑えたり、外部からの騒音を遮断したりするためには吸音材や遮音材の活用が非常に有効です。

  • 吸音材:壁や天井、床に吸音材(グラスウール、ロックウール、フェルト、吸音パネル、厚手のカーテンなど)を設置することで、音の反響を抑え、室内の残響時間を短縮します。これにより、会話が聞き取りやすくなったり、音が響きすぎて不快に感じるのを防いだりする効果があります。
  • 遮音材:防音ドアや二重窓、壁の中に遮音材(石膏ボード、遮音シートなど)を組み込むことで、外部からの騒音や隣室への音漏れを物理的に軽減します。

 

空間のゾーニングによる音の使い分け

オフィスやオープンな空間では、活動内容に応じて音環境を区画分けする「ゾーニング」が非常に有効です。

一律の音環境にするのではなく、場所ごとに最適な音を設定することで利用者の快適性を高めることができます。

  • 集中ゾーン:静かで集中しやすい環境が必要なエリア(例:個人作業ブース、集中ルーム)。ここでは、外部の音の影響を最小限に抑えるために、吸音材を多く使い、マスキング音を流すなどして、極力静かな環境を整えます。
  • コラボレーションゾーン:会議や意見交換など、活発なコミュニケーションが必要なエリア(例:ミーティングスペース、休憩エリア)。ここでは、会話が聞き取りやすいように適度な残響感を持たせつつ、話し声が他のゾーンに漏れにくいような吸音対策も施します。あえて少し賑やかなBGMを流して、会話が外部に届きにくくする工夫も考えられます。
  • リラックスゾーン:休憩や気分転換のためのエリア(例:リフレッシュスペース、仮眠室)。ヒーリングミュージックや自然音を流し、ソファなどの柔らかい家具で音を吸収する工夫を凝らします。

このように、空間の用途に合わせて音響特性を最適化することで、それぞれの活動に合った快適な音環境を実現し、ストレス軽減や生産性向上に繋げられるでしょう。

よくある質問

集中したい時にBGMは効果ありますか

集中したい時にBGMが効果的かどうかは、BGMの種類や個人の特性、そして作業内容によって大きく異なります。

一般的に歌詞のあるボーカル曲やアップテンポな音楽は、脳の言語処理領域や感情に強く働きかけるため、集中を妨げる可能性が高いと言われています。

しかし、インストゥルメンタル(歌詞なし)のクラシック音楽、自然音(小川のせせらぎ、雨音)、ホワイトノイズのような単調な環境音は周囲の邪魔な音をマスキングし、脳を適度に刺激することで集中力を高める効果が期待できます。

音の感じ方は人それぞれですが、どうすれば皆が快適になりますか

音の感じ方は確かに人それぞれであり、全員を完全に満足させることは難しいため「不快に感じる人の割合を減らす」という視点で対策を講じることが現実的です。

そのためには、まずオフィスであれば従業員から家庭であれば家族から「どのような音が気になるのか」「どのような音があれば快適か」といった具体的な意見を吸い上げることが重要です。

その上で、物理的な対策(遮音・吸音)と心理的な対策(マスキング音の導入、音のゾーニング)を組み合わせることが効果的です。

音楽を流すと従業員の生産性は上がりますか

音楽を流すことで従業員の生産性が上がるかどうかは、音楽の種類、業種、個人の好み、そして職場の文化に大きく左右されます。

単純作業や反復作業を行う職場では、適度なBGMが気分転換になり、作業効率を向上させる効果が期待できることが研究で示されています。

特にアップテンポな音楽は活気を与え、単調さを軽減するかもしれません。

しかし、複雑な思考を要するクリエイティブな作業や、顧客対応が中心の職場では、音楽が集中を妨げたり、顧客に不快感を与えたりするリスクもあります。

そのため、一概に「音楽を流せば生産性が上がる」とは言えません。

まとめ

この記事では「音環境心理」という学問を軸に、音が私たちの感情、集中力、そして心身の健康にどのように影響を与えるのかを深く掘り下げてきました。

単なる「騒音」という物理的な現象としてだけでなく、音が持つ意味や文脈が、私たちの快適性やストレスレベルを大きく左右することがお分かりいただけたかと思います。

不快な音は慢性的なストレスや集中力低下といった問題を引き起こす一方で、適切にデザインされた音環境は集中力を高め、リラックス効果をもたらし、結果として生産性の向上にも繋がります。

マスキング効果の活用、吸音材や遮音材による物理的な対策、そして空間の目的に合わせた音の選択やゾーニングは心地よい音環境を創造するための具体的なアプローチです。

今日のオフィスやご自宅で、もし「なんとなく落ち着かない」「集中できない」と感じたら、それは「音」が発するサインかもしれません。

参考文献