業務エアコン取付工事の空調設備会社【株式会社オーソリティー空調】

AUTHORITY | since 2010

NEWS

温熱環境とは?温熱環境を構成する6つの要素について解説

2025.10.17 空調機器活用ノウハウ

温熱環境とは?環境や人による要素や評価方法を解説

「夏は暑くて集中できない」「冬は足元が冷えて仕事にならない」―オフィスやご自宅でそう感じた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

エアコンの設定温度を変えても、なぜか快適に過ごせない。その原因は実は温熱環境という、温度だけではない複雑な要素が絡み合っているかもしれません。

温熱環境とは、私たちが感じる「暑い」「寒い」といった感覚だけでなく、健康や集中力、ひいては建物のエネルギー効率にまで影響を及ぼす非常に重要な概念です。

この記事ではこの温熱環境を構成する具体的な要素から、その評価方法、さらにはオフィスや住宅で快適な温熱環境を実現するためのヒントを解説していきます。

温熱環境とは

温熱環境とは?

温熱環境とは、単に室温が高いか低いかというだけでなく、人が感じる暑さや寒さ、快適さに影響を与える複数の要素が複合的に絡み合った状態を指します。

ここでは、その基本的な定義と私たちが快適だと感じる状態の全体像を捉えます。

温熱環境と快適性

私たちが「快適だ」と感じる温熱環境は、体感温度という非常にパーソナルな感覚に基づいています。

しかし、この感覚は単なる空気の温度だけで決まるわけではありません。

温熱環境は空気の温度、湿度、気流、放射熱といった物理的な要素と活動量や着衣量といった人的要素が複雑に絡み合って形成される、総合的な状態を意味します。

オフィスで「寒い」と感じる人もいれば、「ちょうどいい」と感じる人もいるのは、まさにこの「総合的な状態」に対する感じ方の違いによるものだと言えるでしょう。

人が快適と感じるメカニズム

人間は体内で常に熱を作り出しており、この熱と外部との熱のやり取りによって体温を一定(約37℃)に保っています。

この熱のバランスがとれている状態を「熱平衡」と呼び、この時に人は快適さを感じやすいとされています。

温熱環境の要素がこの熱平衡を乱すと、人は暑すぎたり寒すぎたりと感じ、不快感を覚えるのです。

つまり、快適な温熱環境とは、この熱平衡がスムーズに保たれている状態を目指すことだと言えるでしょう。

体温調節は私たちの生命活動の根幹に関わる、非常に重要なメカニズムなのです。

温熱環境を構成する「6つの要素」

温熱環境を構成する「6つの要素」

温熱環境は以下の6つの要素によって決まります。

これらの要素は互いに影響し合うため、どれか一つだけを改善しても、必ずしも快適な環境になるとは限りません。

例えば、室温が高くても湿度を下げたり、気流を作ったりすることで涼しく感じることもあります。

環境側の4要素

外部からの影響や空間そのものが持つ特性が、私たちの体感温度に大きく関わります。

これらは、建物や空調システムでコントロールできることが多い要素です。

建物や空調システムでコントロールできる要素

1. 気温(空気温度):普段、私たちが温度計で測る空気そのものの温度のことです。温熱環境を考える上で最も基本的な要素であり、エアコンの設定温度はこれを調整しています。

2.湿度:空気中に含まれる水蒸気の量を示すもので、気温と組み合わさって体感温度に影響を与えます。湿度が高いと汗が蒸発しにくく蒸し暑く感じ、低いと皮膚や喉が乾燥して寒く感じやすいものです。

3.気流(風速):空気の流れのことです。例えば、扇風機の風に当たると涼しく感じるように、気流は体の表面からの熱の放散に影響を与えます。風速が速すぎると不快なドラフト(すきま風)として感じられることもあります。

4.放射熱(輻射熱):壁や窓、床など、周囲の物体から直接伝わる熱のことです。たとえ室温が適度でも、窓から強い日差しが入ると暑く感じたり、冷たい壁の近くではひんやりとした寒さを感じたりするのは、この放射熱の影響が大きいからです。ストーブや床暖房の暖かさも、この放射熱によるものです。

 

人側の2要素

私たちの身体の状態や行動も、温熱環境に対する感じ方を変える重要な要素です。

これらは個人の判断や行動で調整できる部分が大きく、温熱環境対策を考える上で人の特性を理解することが欠かせません。

建物や空調システムでコントロールできる要素

5. 活動量(代謝量):人がどれくらいの運動をしているかを示すものです。激しい運動をすれば体内で多くの熱が作られ、じっとしていれば熱の生成量は少なくなります。そのため、活発に動く人は低い室温でも快適だと感じることがありますが、デスクワーク中心の人は少しの室温低下でも寒さを感じやすい傾向にあります。

6. 着衣量(着衣抵抗):身につけている衣服の量や素材による保温性です。厚着をすれば暖かく、薄着なら涼しく感じるのは言うまでもありません。着衣量を調整することで、人はある程度の温熱環境の変化に適応できるため、「クールビズ」や「ウォームビズ」といった服装の工夫は、温熱環境対策において非常に有効な手段と言えるでしょう。

温熱環境が人に与える影響と評価方法

温熱環境が人に与える影響と評価方法

快適な温熱環境は、私たちの健康、集中力、ひいては生産性にまで影響を及ぼします。

そのため、温熱環境を客観的に評価し、適切な状態に保つことが非常に重要です。

不適切な温熱環境が引き起こす問題

オフィスや自宅の温熱環境が不適切だと、単に不快なだけでなく、様々な健康問題やパフォーマンス低下を招く可能性があります。

これは、私たちが思っている以上に深刻な問題かもしれません。

健康へのリスク:熱中症・冷え性・集中力低下

暑すぎると、体温調節機能がうまく働かなくなり、熱中症のリスクが高まります。

体がだるくなったり、頭痛が起きたり、最悪の場合は命に関わる事態に発展することもあります。

一方、寒すぎると体の末端まで血液が行き届かず冷え性になったり、血行不良から肩こりや関節痛の原因にもなりかねません。

また、どちらの場合も脳の働きが低下し、集中力の低下や判断ミスの増加に繋がると言われています。

特に高齢者や小さなお子さん、持病を持つ方にとっては、温熱環境の管理は健康維持に直結する重要な課題です。

作業効率・生産性への影響

オフィス環境において温熱環境が不適切だと、従業員の不満が増えるだけでなく、作業効率が著しく低下することが複数の研究で示されています。

例えば室温が高すぎるとタイピングミスが増えたり、思考力が低下したりすることが分かっています。

逆に低すぎると体がこわばり、創造的な思考が阻害されるといったデータもあります。

これは、企業の経済活動にも直接的な影響を与えるため、決して軽視できない経営者や管理者にとって非常に重要な問題だと言えるでしょう。

温熱環境を客観的に評価する指標

温熱環境を客観的に評価する指標

人の感覚は主観的で個人差が大きいため、「快適さ」を科学的に捉えるためには、温熱環境を客観的に評価するための様々な指標が開発されています。

これらの指標を活用することで、より科学的に快適性を追求できるようになります。

PMV(予測平均温冷感申告)とPPD(予測不満足者率)

国際標準化機構(ISO)によって定められた、温熱環境評価の代表的な指標が「PMV(Predicted Mean Vote:予測平均温冷感申告)」と「PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied:予測不満足者率)」です。

建物や空調システムでコントロールできる要素
  • PMV(予測平均温冷感申告):多くの人がその温熱環境に対して「どの程度暑い(+)または寒い(-)と感じるか」を、-3(非常に寒い)から+3(非常に暑い)までの7段階で予測する指標です。PMVがゼロに近いほど、多くの人が「中間的」すなわち「快適」と感じることを意味します。この数値は、温熱環境の6要素(気温、湿度、気流、放射熱、活動量、着衣量)を総合的に考慮して算出されます。

 

  • PPD(予測不満足者率):その温熱環境に「不満を感じる人の割合」を予測する指標です。例えば、PMVが0(中立)であっても、PPDは最低5%となります。これは、どんなに理想的な温熱環境であっても、必ず一定数の不満者が存在するという、人間の感覚の多様性を示唆しています。国際標準では、PMVが-0.5から+0.5の範囲にあり、PPDが10%以下であれば、快適な温熱環境であると評価されることが多いようです。

その他の主要な温熱環境指標

PMV/PPD以外にも、特定の目的や状況に応じて使われる温熱環境指標がいくつか存在します。

建物や空調システムでコントロールできる要素
  • WBGT(湿球黒球温度):熱中症予防の指標として、特に屋外での作業現場やスポーツ活動で広く使われています。気温、湿度、輻射熱(太陽からの熱など)を総合的に評価し、体への熱ストレスの度合いを示します。

 

  • 作用温度(OT:Operative Temperature):空気温度と放射温度、気流の影響を統合した体感温度に近い指標です。壁や窓からの放射熱の影響を重視したい場合に有効です。

 

  • 有効温度(ET:Effective Temperature):空気温度、湿度、気流の影響を組み合わせた指標で、過去にはPMVと並んで広く用いられました。

これらの指標を適切に活用することで、客観的なデータに基づいた温熱環境の改善策を立案し、より効果的な対策を講じることが可能になるでしょう。

快適な温熱環境を実現するための対策

快適な温熱環境を実現するための対策

快適な温熱環境を実現するためには単にエアコンの温度設定を変えるだけでなく、様々な側面からのアプローチが必要です。

ここでは、オフィスや住宅で実践できる具体的な対策を解説します。

建築設計・リフォームによる改善

既存の建物でも対策は可能ですが、新築や大規模なリフォームの段階で温熱環境を考慮した設計を取り入れることが、最も根本的かつ効果的な改善策となります。

一度施工してしまえば、後から変更するのはなかなか大変ですから、設計段階での検討は非常に重要です。

高断熱・高気密化の重要性

建物の「高断熱・高気密化」は、室内の温熱環境を根本から改善する上で非常に重要です。

断熱性能を高めることは、冬場に室内の暖かい空気が外に逃げにくく、夏場に外の暑い空気が室内に入りにくくする効果があります。

気密性能を高めることで、隙間風による熱の出入りを防ぎ、空調効率を向上させます。

これにより、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境を少ないエネルギーで維持できるようになります。

断熱材の種類や厚さ、窓の性能(二重窓、Low-E複層ガラスなど)が重要な要素です。

高断熱・高気密化は、省エネにも大きく貢献し、光熱費の削減にも繋がるため、長期的に見れば経済的なメリットも大きいと言えるでしょう。

参考サイト:ZEBとは?ZEBの種類と企業にもたらす影響を解説

日射遮蔽と自然換気

夏の暑さ対策には、窓から入る日差しを遮る「日射遮蔽」が非常に効果的です。

例えば、外付けブラインドやロールスクリーン、庇(ひさし)などを活用することで、室温の上昇を大幅に抑えることができます。

室内側のカーテンやブラインドも一定の効果はありますが、熱が室内に入ってきてから遮るため、外側で遮蔽する方がより効果的です。

また、風の通り道を考慮した窓の配置や開放的な間取りにすることで、エアコンに頼りすぎずに自然の風を取り入れる「自然換気」を効果的に活用できます。

参考サイト:換気が必要な理由!”給気と排気のバランス”について

空調システムの適切な設計

空調設備は温熱環境を制御する最も直接的な手段です。

設備の選定から日々の運用、そして定期的なメンテナンスまで、適切に行うことが快適性維持の鍵を握ります。

例えば、最新の省エネ型エアコンは、インバーター制御や人感センサーなどの機能が充実しており、無駄な運転を抑えながら、きめ細やかな温度調整が可能です。

また、オフィスなど広い空間では、場所によって日当たりの良さや人の活動量が異なるため、一律の温度設定では全員が快適に感じにくいものです。

そこで空間を複数のゾーンに分け、それぞれのゾーンで独立して温度や気流を調整できる空調システムを導入することが有効ですし、サーキュレーターを併用して室内の空気を攪拌することで、温度ムラを解消し、より均一な快適性を実現できます。

参考サイト:オフィスの空調設備が快適な空間を作る!オフィスの空調ムラなどの解決方法について解説 | 業務用エアコンの取付工事と空間デザインは【ReAir-リエア-】

よくある質問

職場の温熱環境で「暑い」「寒い」の意見が対立する原因は

職場で「暑い」「寒い」という意見が対立する主な原因は、温熱環境の6要素に対する個人差、そして席による物理的な環境の差が大きいからです。

人は、活動量や着衣量、性別、年齢、体質などによって同じ室温・湿度でも体感温度が大きく異なります。

例えば、代謝の良い人は比較的低い室温でも快適だと感じることがありますし、冷え性の方は少しの室温低下でも寒さを感じやすいでしょう。

また、窓際の日当たりが良い席、エアコンの吹き出し口に近い席、壁際で外気の影響を受けにくい席など、物理的な環境も様々です。

全員が全く同じ体感を得ることは不可能に近いため、対立が生まれるのは自然なことだと理解することが第一歩です。

対策としては個別空調の導入、サーキュレーターによる空気の攪拌、服装の調整推奨、そして何より従業員間のコミュニケーションを促し、お互いを理解する姿勢を育むことが大切だと言えるでしょう。

温熱環境の改善は、省エネに本当に繋がるのか

はい、温熱環境の適切な改善は、長期的に見て高い確率で省エネに繋がります。

単にエアコンの設定温度を極端に変えるのではなく、建物の断熱性能向上、高効率な空調機器の導入、ゾーンごとのきめ細やかな温度管理、そしてフィルター清掃などの適切なメンテナンスを組み合わせることで、無駄なエネルギー消費を大幅に削減できます。

特に、建物の断熱性能を向上させることは、一度行えば長期的に効果が持続するため、空調機器の稼働時間を減らし、結果として電気代の削減とCO2排出量削減という、経済的・環境的な両方のメリットをもたらします。

一時的な投資が必要な場合もありますが、その効果は十分に見込めるでしょう。地球温暖化対策としても非常に有効なアプローチだと言えますね。

衛生管理者は温熱環境についてどこまで責任を持つべきか

衛生管理者は労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則に則り、職場の温熱環境が適切に管理されているかを確認し、改善するための責任を負うべきです。

具体的には定期的な温湿度測定を行い、記録すること、換気設備が適切に稼働しているかを確認すること、従業員からの温熱環境に関する意見を吸い上げ、改善策を提案すること、そして熱中症や冷え性といった健康障害の予防対策を実施することなどが挙げられます。

ただし、全ての温熱環境に関する専門知識を持つ必要はなく、必要に応じて空調設備業者や建築専門家、産業医などと連携し協力体制を構築することも重要な役割です。

従業員の健康と快適な労働環境を確保することが、衛生管理者の最も大切な責務だと言えるでしょう。

まとめ

この記事では、「温熱環境」という概念の基本的な定義から、人が快適だと感じるメカニズム、そしてそれを構成する6つの要素について詳しく解説してきました。

単なる室温だけでなく、湿度、気流、放射熱、さらには私たちの活動量や着衣量といった様々な要素が複雑に絡み合い、私たちの体感や健康、そして作業効率にまで大きな影響を及ぼしていることがお分かりいただけたかと思います。

不適切な温熱環境は、健康リスクや生産性低下を招く一方で、適切な温熱環境は、高断熱・高気密化された建物、最新の省エネ型空調システム、そして衛生管理者によるきめ細やかな運用管理によって実現可能です。

PMVやPPDといった客観的な評価指標を活用し、従業員の意見も積極的に吸い上げながら、継続的に改善に取り組むことが、快適で健康的な空間を創造するための鍵となります。

今日のオフィスやご自宅で、「なんだか快適じゃないな」と感じたら、それは温熱環境のどこかに課題があるサインかもしれません。

ぜひこの記事で得た知識を活かし、あなたの空間をより快適で生産性の高いものへと変革するための一歩を踏み出してみてください。

参考文献