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R-22冷媒からR-32冷媒への変更理由とは? リスクとメリットを解説
2025.01.24 空調機器導入ノウハウ

- R-22冷媒とR-32冷媒について
- R-22冷媒の規制について
- R-32冷媒のメリットとSHK制度について
エアコンや冷蔵庫などに欠かせない「冷媒ガス」は、私たちの生活を支える重要な役割を果たしています。
しかし、冷媒の選定には環境負荷や法規制が大きく影響しており、特にR-22冷媒の使用が規制される中で、注目されているのがR-32冷媒です。
この記事では、冷媒ガスの種類、R-22とR-32の違い、それぞれの特性、そして対象事業者が遵守すべきSHK制度との関連について解説していきます。

エアコンの冷媒R-22は生産終了?冷媒の基礎知識からR-22の規制理由を解説
エアコンで室内を暖めたり冷やしたりできるのは、エアコン内に冷媒とよばれるガスが入っているからです。 しかし、冷媒にはオゾン層の破壊につながるものや、温室効果が強いものがあり、今では使用されていなかった…
目次
冷媒ガスとは
冷媒は、液体から気体、気体から液体へと状態を変える際に熱を吸収・放出することで「熱交換」を行い、エアコンや冷蔵庫の内部で循環しながら空気を冷やしたり温めたりします。
冷媒にガス(気体)が使われるのは、液体と気体の間を容易に行き来できる性質があるためです。
そして、冷媒として使われるガスは以下のようなさまざまな条件が求められます。
- 安全性:取り扱い時に事故が起こりやすいものや、使用中に火災や人体への被害があるようなものは冷媒には使えません。毒性や可燃性がなく、容易に扱えるという条件が求められます。
- 環境性:冷媒に使われるガスは、長年オゾン層を破壊する問題を抱えてきました。さらに、地球温暖化への影響も懸念されています。そのため、環境に優しい冷媒の開発と使用が求められています。
- 性能:冷暖房効率がよいこと、そして、劣化せずに長く使えることなどの性能の高さが求められます。
- 経済性:高価なガスや希少なガスであれば、一般的に普及はできません。新興国でも使える価格帯で安定していることが求められます。
冷媒ガスの4つの種類
冷媒の種類を説明します。
クロロフルオロカーボン(CFC)
クロロフルオロカーボン(CFC)は、フロンの一種として、初期の冷房装置や電気冷蔵庫、車のエアコンなどで広く使用されていた冷媒です。
しかし、オゾン層を破壊する原因の一つとされ、1987年に採択されたモントリオール議定書により、生産中止と全面廃止が決定されました。
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
クロロフルオロカーボン(CFC)の代替として導入されたのが、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)です。
パッケージエアコンやルームエアコンで広く使用されてきました。
HCFCは、オゾン層への破壊力がCFCに比べて低いものの、依然としてオゾン層を損なう性質を持っています。
そのため、クロロフルオロカーボンと同様に、モントリオール議定書のもとで2020年までに全面的な廃止が決定されました。
ハイドロフルオロカーボン(HFC)
ハイドロフルオロカーボンはCFCからHCFCに変わり、その次に使われるようになった冷媒です。
オゾン層に影響しないと判明しているため、現在の主流冷媒ガス(代替フロン)になっています。
ただし、地球温暖化係数が高いという環境的デメリットがあり、課題点とされています。
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)
ハイドロフルオロカーボン(HFC)は地球温暖化係数(GWP)が高いことが問題視されたため、その代替として開発されたのがハイドロフルオロオレフィン(HFO)です。
HFOはオゾン層に悪影響を与えず、地球温暖化係数も非常に低いという利点があります。
しかし、毒性の懸念があるため、人体に対する安全性が課題とされています。
さらに、従来の冷媒に比べてエネルギー効率が劣る点もあり、これらの課題を克服するための改良が求められています。
R-22は”HCFC”のひとつ
R-22は2019年まで優れた冷媒ガスとして広く利用されていました。
冷蔵庫や冷凍庫、エアコンなどで使用されており、大きな特徴は冷凍効率が高いこと、そして冷媒の容積を抑えられることです。
しかし、R-22はハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に属し、オゾン層を破壊するリスクがあるため、2020年までに全廃されることが決定されていました。
実際、R-22に対応する機種の生産は2020年に完全に終了していますが、エアコンなどは耐用年数が長いことから、現在もR-22が使用されているケースがあります。
R-22のエアコンを使用している場合、生産がすでに終了しているため、故障時の修理は難しいです。
R-22を使用し続けるリスク
R-22のエアコンを使い続けることで、以下のようなリスクが生まれます。
- 部品の調達が難しく、調達できたとしてもコストが大きい。
- 稼働にかかる電力も大きいため、電気代がかかる。
対象のエアコンがガス漏れや故障を起こしていなくても、ある程度年数が経っている場合は買い替えをおすすめします。
なお、冷媒を調べるときは室外機の銘板をチェックしてみましょう。
R-22の代替として代表的なR-32とは
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)はオゾン層を破壊する可能性があるため、環境負荷の少ないハイドロフルオロカーボン(HFC)が使用されるようになりました。
特に、R-32やR410などの新しい冷媒が広く使われています。
R-22とR-32の数値差
- オゾン破壊係数(ODP):R-22は0.05 / R-32は0
- 地球温暖化係数(GWP):R-22は1810 / R-32は675参考:DAKIN「新冷媒 R-32 世界で初めてHFC冷媒R-32を採用」
オゾン破壊係数とはオゾン層を破壊する可能性を表した数値で、地球温暖化係数とは温室効果の程度を数値化したものです。
どちらも数字が小さい方が地球に優しいと表現できます。
また、R-32は安全性が高いうえに熱伝導率が大きく、R-22と比べ、およそ3分の1程度の消費電力で同じくらいの冷暖房を運転できると言われています。
SHK制度は企業の温室効果ガス排出量削減を促すためのもの
SHK制度は、2006年4月1日から運用開始されました。
「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき、温室効果ガスを多量に排出する者(特定排出者)に自らの温室効果ガスの排出量を算定(S)し、国へ報告(H)するという制度です。
算定と報告は義務となっており、報告された情報を国が集計・公表(K)します。
なお、もしも対象者(事業者)が報告を怠ったり虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料が科されます。
R-32はバランスの取れた冷媒
少しでも地球に優しい冷媒ガスを作るため、現在も開発は進められています。
しかし、現状、さまざまなバランスが取れた冷媒と言えるのはR-32です。
使用しているエアコンの冷媒がR-22である場合は、修理の困難さや高い費用が発生する可能性が高いため、早めに買い替えを検討することをおすすめします。
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