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フロンによるオゾン層の問題と課題や現状を解説
2025.03.28 空調機器導入ノウハウ

地球環境問題が語られる際に、代表的な例としてよく挙げられるのが「オゾン層の破壊」です。
南極上空でオゾンホールが発見され、一部の地域でオゾン層の薄化が進んでいることが明らかになったことで、世界中がこの問題の深刻さを認識するようになりました。
オゾン層のさらなる破壊を防ぐために、世界各国や日本ではさまざまな対策が講じられています。
この記事では、そもそもオゾン層とは何か、その仕組みや役割、オゾン層破壊のメカニズム、フロンがオゾン層に与える影響、そしてオゾン層回復に向けた世界的な取り組みの歴史について、順を追って解説していきます。
目次
オゾン層とは
オゾン層とは、地上から約10〜50km上空の成層圏に存在し、オゾン(O₃)が高濃度に分布する層を指します。
成層圏に存在するオゾンの約90%はこのオゾン層に集中しており、その形成は約27億年前に始まったとされています。
オゾン層最大の役割は、太陽光線に含まれる紫外線をカットすることです。
紫外線にはUV-A、UV-B、UV-Cの3種類があり、中でも生物に有害とされるUV-BとUV-Cは、動植物の成長を妨げるほか、人間の皮膚がんや白内障の発症リスクを高める原因となります。
オゾン層はUV-Cを完全に吸収し、UV-Bの大部分も吸収するため、これにより地表に到達する有害な紫外線の量が大幅に減少します。
この紫外線防御機能のおかげで、海の生物が進化し、陸上へと進出できる環境が整ったと考えられています。
また、オゾン層は地上の生命を紫外線から保護していることから、「地球の宇宙服」とも呼ばれています。
オゾン層破壊の原因とメカニズム
1970年代半ば、クロロフルオロカーボン(CFC)がオゾン層を破壊する可能性が科学者によって指摘されました。
クロロフルオロカーボン類(CFC、HCFC、HFC)は、いずれも人工的に合成されたフロンガスの一種です。
【フロンの種類】
・CFC(クロロフルオロカーボン)
・HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン
・HFC(ハイドロフルオロカーボン)
フロンによってオゾン層が破壊されると、地上に達する有害な紫外線の量が増加し、その結果生態系への悪影響が生じるとされています。
オゾンホールの大きさは毎年の気象条件によって変動しますが、全体的な傾向としては回復しており、最新の報告では「2066年ごろには1980年の水準に回復する可能性が高い」とされています。
なお、日本では気象庁がつくばと南極昭和基地でオゾン層を観測しています。
参考:国土交通省気象庁「つくば及び南極昭和基地の上空のオゾン層の状況(2023年)
参考:BBC NEWS JAPAN「オゾン層、数十年後には回復の可能性=国連報告書」
フロンによってオゾン層が破壊される過程
以下は、フロンがオゾン層を破壊するまでの過程です。
①地上で使用されたフロンガスが大気中に放出される。
②一部のフロンは化学的に非常に安定しており、対流圏ではほとんど分解されない。
③時間をかけて成層圏に到達する。
④成層圏で強い紫外線を浴びるとフロンが分解し、塩素原子が放出される。
⑤放出された塩素原子がオゾン分子(O₃)と反応し、オゾンを分解する。
また、オゾン層を破壊するのはフロンだけではありません。
消火剤に使われるハロン(臭素を含む化合物)や、トリクロロエタン、四塩化炭素、臭化メチルなどの化学物質もオゾン層を破壊する要因になっています。
オゾン層を回復させるために
オゾン層を回復させるためには、オゾン層を破壊する化学物質の削減が必要です。
破壊物質がなくなれば、オゾン層は時間をかけて自然に回復していきます。
そこで求められるのは、フロン類の適切な回収とノンフロンの促進です。
現在も、エアコンや冷蔵庫などの製品にはフロン類が使用されているものが多くあります。
これらを不要になった際に適切に処理せず、そのまま廃棄すると、大気中にフロンが放出されてしまう恐れがあるため、使用後は法律や自治体のルールに従い、適切な方法で処分することが大切です。
また、技術の進歩により、ノンフロン冷蔵庫などの環境に配慮した製品も登場しています。
エアコンや冷蔵庫などの買い替え時には、ノンフロン製品を選ぶこともオゾン層を守る行動のひとつです。
ちなみに、世界がオゾン層の保護に向けて一致団結するきっかけとなったのは、南極上空で「オゾンホール」が確認されたことでした。
これを受け、1985年には「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が採択され、さらに、1987年には「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が締結され、具体的な規制が始まりました。
モントリオール議定書では、オゾン層を破壊する可能性のある物質ごとに、生産量・消費量を段階的に削減または全廃することが決められました。
さらに、非締結国との規制物質の輸出入を制限・禁止することで、より効果的な管理が行われています。
このモントリオール議定書は、先進国だけでなく発展途上国も含めた規制を行っている点、そして、途上国の対応を支援するために先進国が基金を設立し、資金援助を行っている点が高く評価されています。
代替フロンの温室効果
2016年に行われたキガリ改正では、それまで「代替フロン」として活用されてきたハイドロフルオロカーボン(HFC)に対する規制が強化されました。
HFCはオゾン層を破壊しないものの、強力な温室効果ガスであり、その温暖化係数は、種類によってCO₂の100倍程度のものから1万倍以上のものまで幅があります。
たとえば、HFC-134aはCO₂の約1,430倍、HFC-23は約14,800倍の温室効果を持っています。
オゾン層の破壊を免れても、温室効果ガスが削減されなければ地球温暖化を抑えることはできません。
そのため、HFCに対する規制が必要になりました。
このキガリ改正により、先進国は2036年までにHFCの生産・消費量を、2011〜2013年の基準値から85%削減することを目標としています。
日本のオゾン層保護に対する取り組み
日本では、1988年に施行された「オゾン層保護法」に基づき、フロン類の削減が進められてきました。
これはオゾン層を破壊する恐れのある物質の各種規制を行うための法律です。
特に、クロロフルオロカーボン(CFC)は、冷凍・空調機器の冷媒として広く使用されていましたが、オゾン層保護の観点から代替フロン(HFCなど)への切り替えが進められてきました。
しかし、キガリ改正でHFCが規制対象になったため、日本のオゾン層保護法も改定され、地球温暖化への影響を抑えた次世代冷媒(ノンフロン冷媒など)への転換が進められています。
また、フロン類の大気中への放出を防ぐため「フロン排出抑制法」や「家電リサイクル法」、「自動車リサイクル法」などに基づき、使用済み製品からのフロン類回収や適正処理が義務付けられています。
回復傾向にあるものの、予断を許さないオゾン層の破壊
1970年代から、フロン類によるオゾン層の破壊が指摘されるようになり、世界各国が環境保護のために協力を進めてきました。
その結果、現在ではオゾン層の回復傾向が確認されています。
モントリオール議定書のもとで世界的にフロン類の規制が進められていますが、近年、中国など一部の地域でCFC-11の違法生産が報告されており、依然として課題が残っています。
日本でも地球環境を守るため、さまざまな取り組みが行われています。
一人ひとりが身近なところから行動を起こすことが重要です。
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