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ビルが「人を見て」動く時代へ:AIカメラを使った空調が描く、快適と省エネの新常識
2025.07.18 空調機器導入ノウハウ

私たちは日々、オフィスや商業施設、病院、学校など、さまざまな建物の中で時間を過ごしています。
その空間の快適さを大きく左右するのが、空調や換気設備です。しかし、目には見えない空気の流れや温度、そしてそこで過ごす人々の細かなニーズを、これまでのシステムだけで完璧にコントロールするのは至難の業でした。
もし、ビルそのものが、まるで生き物のように私たち一人ひとりの体調や気分を察し、最適な空気を届けてくれるとしたら?
そんな夢のような話が、今、現実のものとなりつつあります。
最先端のAI(人工知能)とカメラ技術が、建物の空調・換気に新たな息吹を吹き込み、私たちの毎日をより豊かに変えようとしているのです。
目次
ビルが「人を見て」呼吸する時代へ:AIカメラ空調が描く、快適と省エネの新常識
「あれ?なんだかこの場所だけ暑い(寒い)な…」
「会議室、誰もいないのにエアコンがガンガンついてない?」
「毎月の電気代、なんでこんなに高いんだろう…」
オフィスや施設で、こんな「ちょっとした不満」や「もったいない」を感じたことはありませんか?
実は今、そんなビルの空調や換気の悩みを、まるで生き物のように賢く解決してくれる技術が注目されています。
それが、AI(人工知能)とカメラ技術を組み合わせた、新しい空調・換気ソリューションなんです。
空調機械のメーカーは、長年にわたり培ってきた大規模空調設備の経験を活かし、この最先端の技術をかけ合わせることで、ビルを「もっと賢く」「もっと快適に」「もっとエコに」変えるための情報発信と提案を行っています。
この記事では、AIとカメラが、どうやってビルの空気と電気代の常識をひっくり返そうとしているのか、具体的な例と、その効果はどんなものかを見ていきます。
なぜ、AIの目と頭脳が必要なのか
これまでの空調は、部屋の真ん中にある温度計と、あらかじめ決めた時間設定が頼りでした。
でも、想像してみてください。
- 窓際の人は日差しで暑がり、奥の人は寒がっている。
- 会議室は一瞬満員になったかと思えば、すぐにガラガラに。
- オフィス全体が同じ温度でも、活発に動く人と座りっぱなしの人では体感温度が違う。
これらを全部、人が手動で調整するのは、無理がありますよね。
結果、「なんか快適じゃない」「電気代が無駄にかかっている」「空気もちょっとこもりがち…」といった悩みが生まれていました。
そこでAIとカメラの出番です。
AIはビルの「頭脳」。そしてカメラは、その「目」となって、今、この空間で何が起きているかをリアルタイムで、正確に捉えます。
この二つが連携することで、人間では見落としがちな細かな状況まで瞬時に判断し、最適な調整が可能になります。
これこそが、「必要な時に、必要な場所で、必要なだけ」という最適化。
ビル管理の常識を大きく変える、進化と言えそうです。
【具体例で解説】AIカメラ空調がもたらす4つのすごい変化
AIとカメラが力を合わせることで、ビル空間が変わるポイントを3つ挙げてみます。
1. 人数や動きを見て空調を最適化
カメラが部屋の中に「今、何人いるか」を数え、さらに「どこに人が集まっているか」「どれくらい動いているか」までAIが判断します。
これは、個人を特定する顔認証ではなく、プライバシーに配慮した技術(シルエットや動きを捉えるなど)を使っているそうです。
この情報をもとに、会議室の人数が増えれば、換気扇の風量を自動で上げて空気をきれいに保ち、人がいなくなれば、すぐに空調を弱めたり止めたりして、電気の無駄を徹底的に排除します。
また、無人のエリアや、利用頻度の低い部屋の空調も自動でセーブしてくれます。
特に人の出入りが多い場所では、AIによる人数検知と連動した空調制御で、最大で30%ものエネルギーコストを削減できたという研究結果も報告されています。
[引用元:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231005_01]
また、CO2濃度が適切に保たれることで、会議中の眠気や集中力低下も防げ、従業員の生産性向上にもつながると考えられています。
2. ピンポイントで快適さを調整
オフィスの中で、「窓際は日差しで暑いのに、奥の席は冷えすぎている…」なんて、そんな経験、ありませんか? これまでの空調だと、どうしても部屋全体が同じ温度設定になってしまいがちでした。
でも、AIカメラは違います。「今、誰がどこにいて、どんな活動をしているか」、さらには「日差しがどこに当たっているか」といった外部環境まで、AIがまとめて細かく分析します。
例えば、AIが「あ、あの窓際の人は少し暑がっているな」と判断すれば、そのエリアだけにピンポイントで冷風を強めに送る、といった賢い調整をしてくれます。
また、オフィスのリフレッシュスペースやフィットネス施設のように、体を活発に動かす場所では、人の体温上昇に合わせて自動で温度を下げたり、換気を増やしたりと、一人ひとりの体感に合わせた「ちょうどいい」快適さを提供してくれます。
3. 空気を「見守り」健康空間を確保
空気の質は、目には見えません。しかし、CO2やPM2.5、さらには目に見えない化学物質(VOC)などが、知らず知らずのうちに私たちの健康に影響を与えることがあります。
AIカメラは、人の密集度を検知するだけでなく、CO2やPM2.5、VOCなどの高精度な空気質センサーからのデータを、AIがまとめて分析します。
もしCO2濃度が上がりすぎたり、不審な物質が検知されたりすれば、AIが自動で換気を強化できるとのこと。必要であれば、窓を開けるタイミングを知らせることも可能なようです。
適切な換気管理は、インフルエンザなどの感染症伝播リスクを低減する効果が期待できるとされています。
4. 故障を予知し賢くメンテナンス
空調設備は、ビルにとっての心臓部。突然故障すると、業務がストップしたり、大きな修理費用がかかったりします。
AIは、空調機のモーターの動きや温度、電力消費などの運転データを常に学習し、さらにカメラがファンや配管のわずかな異変(錆や水漏れの初期兆候、異常な振動など)を視覚的に捉えます。
AIが「いつもと違う動き」を検知すると、「この部品はそろそろ寿命かもしれません」「どこか調子が悪いかも」と、故障の「予兆」を事前に教えてくれます。これにより、計画的なメンテナンスや部品交換が可能になり、突然の故障を防ぎ、修理コストやダウンタイム(設備が停止する時間)を大幅に削減できます。
今後、AIによる予知保全を導入した企業では、計画外の設備停止も減少し、年間保守費用もできるなど、まさに、長く使うほどお得になる、賢いビル管理の実現ができるかもしれません。
AI対応空調の導入を成功させるために:求められる専門性とは
「AIってすごいけど、導入は大変そう…」「うちの古い設備にも合うのかな?」「プライバシーは大丈夫?」といったご心配もあるかもしれません。
AI技術をビルに導入し、その性能を最大限に活かすためには、いくつかの大切なポイントがあります。
まず、AI対応の空調設備は、単に機器を入れ替えるだけではその性能を十分に発揮できません。既存の設備をどのように活かし、AI機能が搭載された機器と連携させるか。そして、その空間に最適な空調レイアウトをどう構築するかには、専門的なノウハウが不可欠です。
また、AIカメラなどを用いる技術では、プライバシー保護に最大限配慮した設計と設置が重要になります。システムそのものが匿名化技術を用いるだけでなく、カメラの物理的な配置一つにも、そのノウハウが求められます。
初期費用はかかりますが、AI対応空調設備の導入は、省エネ効果やメンテナンス費用削減、従業員の生産性向上といった長期的なメリットをもたらします。そのため、導入前に具体的なシミュレーションを行い、投資対効果(ROI)を明確に把握することが、賢い選択につながります。
未来の快適空間へ、オーソリティー空調と
AIとカメラ技術がもたらす空調・換気の進化は、ビルを「ただの建物」から、そこで働く人々や訪れる人々の体調や行動に寄り添い、自ら快適さを生み出す「生き物」へと変えていきます。
オーソリティー空調は、これからも空調設備に関する専門知識を追求し、AI機能が搭載された最新の空調設備も、確かな技術で設置・施工することで、お客様のビジネスの持続可能な成長と、そこで過ごす方のウェルネス(心身の健康と幸福)を最大化する「未来のビルディング」の実現に貢献してまいります。