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オフィス・店舗の生産性向上!「見えない空気」を見える化するIAQ改善とは?
2025.04.04 空調機器活用ノウハウ

快適なオフィス環境や、お客様が心地よく過ごせる店舗空間。
そのために照明や内装、温度設定に気を配る方は多いと思います。しかし、意外と見落とされがちなのが「室内空気質(IAQ: Indoor Air Quality)」です。
実はこの「空気の質」が、従業員の集中力や健康、ひいては企業の生産性、店舗の顧客満足度にまで大きな影響を与えていることをご存知でしょうか?
今回は、空調・換気設備のプロフェッショナルとして、オフィスや店舗におけるIAQ改善の重要性と、具体的な最新ソリューションについてご紹介します。
目次
なぜ今、室内空気質(IAQ)が重要なのか?健康と生産性への影響
一日の大半を室内で過ごすことが多い現代人。
特にオフィスワーカーの場合、その時間は非常に長くなります。
その中で室内の空気が汚れていると、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 集中力・思考力の低下:二酸化炭素(CO2)濃度の上昇は、眠気や倦怠感、意思決定能力や戦略的思考といった知的生産性を低下させることが、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究[注1]などで具体的に示されています。
- 健康被害(シックビルディング症候群など):建材や家具から放散されるVOC(揮発性有機化合物)(厚生労働省が室内濃度指針値を定めているホルムアルデヒド、トルエンなど)、カビ、ダニ、ホコリ、PM2.5などは、頭痛、めまい、吐き気、目・鼻・喉の刺激といった症状(シックビルディング症候群)の原因となり得ます。
- 感染症リスク:適切な換気が行われていない空間では、ウイルスや細菌を含むエアロゾルが滞留しやすくなり、WHO(世界保健機関)も換気の重要性を指摘しているように[注2]、空気感染のリスクが高まります。
- 従業員の欠勤率上昇:空気質の悪さが原因で体調を崩す従業員が増えれば、生産性の低下(研究によっては数%〜十数%の差が出るとの報告も)や欠勤率の上昇に直結します。
- 店舗での顧客満足度低下:空気がよどんでいたり、不快な臭いがしたりする店舗は、顧客にマイナスイメージを与え、滞在時間の短縮や再来店率の低下につながる可能性があります。
このように、良好なIAQを維持することは、従業員の健康を守り、知的生産性を高め、快適な空間を提供するために不可欠なのです。「健康経営」の観点からも、IAQへの配慮はますます重要になっています。
[注1] ハーバード大学 T.H. Chan School of Public Health, Cognitive Function Performance in Green and Conventional Buildings (COGfx Study) など。CO2濃度やVOC濃度が低い環境下で、意思決定、戦略、危機対応などの認知機能スコアが向上することを示唆。
[注2] WHO (世界保健機関) “Roadmap to improve and ensure good indoor ventilation in the context of COVID-19” や、その他感染症対策における換気の重要性に関する各種ガイダンス。
注意すべき主な空気質(IAQ)の要素
具体的にどのような要素が空気質に影響するのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介します。
- 二酸化炭素(CO2):人の呼気によって濃度が上昇します。建築物衛生法(ビル管法)では特定建築物に対し1000ppm以下が基準とされていますが、厚生労働省の「良好な換気状態の基準」[注3]などでは、可能であればさらに低いレベル(例: 800ppm以下)を維持することが望ましいとされています。
- 揮発性有機化合物(VOC):建材、家具、接着剤、OA機器、芳香剤などから放散されます。ホルムアルデヒドなどが有名で、厚生労働省は複数のVOCについて室内濃度指針値を設定しています。
- 粒子状物質(PM2.5など):屋外からの侵入や、室内での活動(コピー、喫煙など)によって発生します。呼吸器系への影響が懸念されます。
- 温度・湿度:快適性はもちろん、カビやダニの発生、ウイルスの生存率にも影響します。(例:ビル管法では相対湿度40%〜70%が基準)
- ハウスダスト・カビ・細菌:アレルギーや感染症の原因となります。
[注3] 厚生労働省「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法 など。必要換気量(一人あたり毎時30立方メートル)を確保する等の推奨。
オフィス・店舗のIAQを改善する具体的なソリューション
では、どのようにしてIAQを改善すればよいのでしょうか。空調・換気設備のプロとして、効果的な方法をご紹介します。
1. 効果的な「換気」の導入・見直し
IAQ改善の基本は、汚れた室内の空気を排出し、新鮮な外気を取り入れる「換気」です。建築基準法では、原則として全ての建築物に換気設備の設置が義務付けられており、一般的に必要換気量は居室の床面積や容積に基づいて計算されます(例:住宅では0.5回/h以上)。この基準の確保はもちろん、より質の高い換気方法を検討することが重要です。
- 窓開け換気の限界:手軽ですが、天候に左右され、外気の汚染物質(花粉、PM2.5など)を取り込んでしまう、冷暖房効率が著しく低下する、といったデメリットがあります。
- 機械換気設備の重要性:安定した換気量を確保するには、機械換気(第一種・第二種・第三種)が不可欠です。特に気密性の高い現代の建物や、窓開けが難しいオフィス・店舗ではその重要度が増します。
- おすすめは「熱交換換気システム(第一種換気)」:給気と排気を機械で行い、その際に熱(と湿度 ※全熱交換器の場合)を交換するシステムです。冷暖房のエネルギーロスを最小限に抑えながら(一般的に50%~80%程度の熱回収効率)、計画的で安定した換気を実現できます。初期投資はかかりますが、ランニングコスト(電気代)の削減と快適性向上に大きく貢献します。
2. 高性能フィルターによる空気清浄
外気に含まれる汚染物質や、室内で発生するハウスダストなどを除去するには、フィルターの性能が重要です。
- 空調機・換気システムのフィルター:定期的な清掃・交換はもちろん、より捕集効率の高いフィルター(例:MERV13以上やHEPAフィルターなど、粒子径に応じた捕集率が定義されている)への交換を検討するのも有効です。
- 空気清浄機の活用:換気システムを補完するものとして、高性能な空気清浄機を設置することも有効な手段です。ただし、空気清浄機はCO2濃度を低減できないため、換気の代替にはなりません。設置場所や機種選定については、専門家にご相談ください。
3. IAQセンサー活用による「見える化」と「デマンド制御」
空気の状態は目に見えません。そこで役立つのがIAQセンサーです。
- 空気質の「見える化」:CO2濃度、PM2.5、VOCなどをリアルタイムで計測し、モニター表示することで、空気の状態を客観的に把握できます。従業員や顧客の安心感にもつながります。
- デマンド制御換気:IAQセンサーの計測値と連動し、空気の汚れ具合に応じて換気量を自動で最適化するシステムです。例えば、会議室で人が増えてCO2濃度が上がったら換気量を増やし、人がいなくなれば換気量を抑えるといった制御が可能です。これにより、過剰な換気によるエネルギーロスを防ぎ、効率的なIAQ管理を実現します。
IAQ改善への投資が生み出す価値
適切な換気設備やIAQ管理システムの導入には初期投資が必要です。しかし、それは単なるコストではありません。以下のような価値を生み出す「投資」と捉えることができます。
- 知的生産性の向上:集中しやすい環境は、従業員のパフォーマンスを高めます(前述のハーバード大学の研究[注1]では、空気質改善により認知機能テストのスコアが平均で61%、最大で101%向上したと報告されています)。
- 欠勤率の低下・健康増進:快適で健康的な空気環境は、従業員の満足度と健康を守ります。
- 顧客満足度の向上:店舗において、清潔で快適な空気は、お客様の滞在時間を延ばし、リピート率向上に貢献します。
- 企業価値・ブランドイメージの向上:従業員や顧客の健康・快適性を重視する姿勢は、「健康経営」の実践として、企業イメージを高めます。近年注目されるWELL認証などの国際的な建物認証制度の取得にも繋がります。
まとめ:快適な空気環境はプロとの連携で
オフィスや店舗の室内空気質(IAQ)は、そこで働く人、訪れる人の健康、快適性、そして生産性に直結する重要な要素です。しかし、目に見えない空気の質を適切に管理するには、専門的な知識と技術が不可欠です。
「最近、オフィスが息苦しい気がする」、「店舗の換気を見直したい」、「最新の省エネ換気システムに興味がある」など、空気質に関するお悩みやご要望がございましたら、ぜひ私たち空調・換気設備のプロフェッショナルにご相談ください。
現状の診断から、最適な空間の設計、責任ある施工、そして導入後のサポートまで、ワンストップで対応いたします。
【注釈・参考文献について】
※ 注釈は代表的な例やガイドラインを示すものであり、個別の研究や詳細な基準については、専門機関の最新情報をご確認ください。
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