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業務効率は空気で決まる?オフィスの換気とCO₂濃度の関係
2025.06.27 空調機器導入ノウハウ

Q. オフィスの空気環境は業務効率にどう影響するのか?
空気の質が悪いと、集中力の低下や作業効率の悪化を引き起こします。CO₂濃度の上昇や酸素不足が主な原因の一つです。
Q. CO₂濃度の基準値や測定方法は?
CO₂濃度は一般的に1,000ppm以下が望ましいとされ、厚生労働省も同様の基準を定めています。測定方法はCO₂センサーを活用するのが一般的です。
昨今のオフィスでは空気環境の質が従業員の集中力や健康状態、さらには業務の生産性に大きく影響しています。
特に換気が不十分な空間では二酸化炭素濃度が高まり、眠気や疲労感が増すことも珍しくありません。
この記事では、オフィスの空気環境にまつわる課題とその解決策を詳しく解説していきます。
目次
オフィスの空気環境が業務に与える影響
オフィス内の空気の質は、働く人々の集中力や判断力に直接関わってきます。
ここでは、空気環境が業務効率に与える影響について、いくつかの側面から見ていきましょう。
集中力や判断力に及ぼす影響
空気がこもった室内では二酸化炭素濃度が上昇しやすく、脳の働きが鈍くなります。
特に、物事を考えながら作業をする仕事では、空気の質の低下がミスや作業遅延の原因になり得ます。
二酸化炭素と脳の働きの関係
人の脳は空気中の酸素を使って働かせています。
しかしCO₂が増えると相対的に酸素の取り込みが減少し、脳の血流量も低下します。
その結果、集中力や記憶力が低下し、創造的な思考力も鈍ります。
これは短時間の変化ではなく、日常的な空気環境の質が長期的なパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。
空気質の変化に敏感な人への影響
体質によっては、空気の汚れや湿度の変化に敏感な人もいます。
アレルギー持ちの社員や呼吸器疾患を抱える人にとって、空気環境の悪化は業務に支障をきたすだけでなく健康上のリスクにもなります。
二酸化炭素濃度と集中力の関係
空気環境の中でも特に重要なのが、CO₂濃度の管理です。濃度が高まると、目に見えない形で作業効率に悪影響を及ぼします。
CO₂濃度が高いと起きる現象
オフィスのCO₂濃度が上昇すると、空気がよどんだように感じられ、息苦しさや不快感を覚えることがあります。
また、室内に入った瞬間に「空気が重い」と感じることがあれば、それはCO₂が溜まっている可能性が高いです。
眠気・頭痛・疲労感の原因に
二酸化炭素の濃度が1,000ppmを超えると、眠気や軽い頭痛、だるさを感じやすくなります。
これらはすべて酸素不足に起因する症状であり、放置すると慢性的な疲労や集中力の欠如を引き起こすおそれがあります。
オフィスのCO₂濃度の基準と測定方法
空気の質を適切に管理するには、まず数値として測定することが重要です。
ここでは基準値とその測定方法について解説します。
一般的な濃度基準と建築物環境衛生管理基準
多くの専門機関では、室内のCO₂濃度を1,000ppm以下に保つことを推奨しており、いわゆるこの値が一般的なCO2濃度の基準といえます。
また、厚生労働省が定める「建築物環境衛生管理基準」においても、空気環境の基準としてCO₂濃度は1,000ppm以下とされており、これは「事務所衛生基準規則」に基づく法律であり、快適な職場環境を整えるうえでの指標にもなっています。
オフィス内の空気環境が悪化するポイント
オフィスで空気環境が悪化する原因は日常的な運用や設備の不備にあります。
ここでは特に注意すべき3つのポイントを取り上げて解説します。
換気設備が不十分
もっとも典型的な問題は、換気システムの性能不足です。
古い建物や簡易的なリノベーションが施されたオフィスでは、外気を効率的に取り入れる設備が備わっていないことがあります。
その結果、二酸化炭素や湿気、ホコリなどが室内に滞留しやすくなります。とくに窓が開かない構造のオフィスでは外部との空気の循環がほとんど行われず、体調不良を訴える人が出やすい傾向があります。
人の密度が高く空気がこもる
人数が多い部屋ほど、CO₂濃度は上昇します。
たとえば、10人程度が集まって会議をしている部屋では30分程度で1,000ppmを超えることも珍しくありません。
さらに、Web会議の普及により、会議室の利用頻度が高まることで空気の入れ替えのタイミングが減ってしまうことも一因です。
こうした密閉空間では、使用ごとに換気するルールづくりなどが必要です。
観葉植物や調湿アイテムが少ない
植物や調湿器などの「空気補助要素」が少ないことも、空気環境を悪くする原因になります。
観葉植物は空気中のCO₂や有害物質を吸収・浄化する作用があり、室内の空気を自然に整える手助けをしてくれます。
こうした要素がない空間では、空気の「よどみ」が生じやすく、息苦しさや不快感を感じることがあります。
酸素不足が引き起こす体調不良と眠気
空気環境の悪化によって引き起こされる問題のなかでも、酸素不足はとくに深刻です。
ここではその酸素不足が引き起こす原因と影響について見ていきましょう。
酸素濃度と血中酸素の関係
人の体は空気中の酸素を肺から取り込み、血液に乗せて全身に運んでいます。
酸素濃度が低い空間ではこの取り込み効率が落ち、血中酸素飽和度(SpO₂)が下がります。通常は95〜100%の範囲が正常とされますが、90%台前半になると注意が必要です。
自覚症状がないまま、集中力が落ちていたり、疲れやすくなったりすることがあります。
酸欠による眠気・集中力低下の仕組み
酸素が足りなくなると、脳が十分に働けず、自然とぼんやりした感覚が続きます。
これは「脳の酸欠」と呼ばれ、最も典型的な症状が眠気です。
ほかにも、「頭がボーっとする」「考えがまとまらない」などの感覚は、空気中の酸素不足からくる場合が多いです。
健康への影響と対策の重要性
慢性的な酸素不足は、免疫力の低下や疲労の蓄積にもつながります。
とくに体調に不安を抱える社員にとっては、日常的な健康管理に影響が及びかねません。
そのため、空調・換気・空気清浄といった複数の対策を組み合わせ、オフィスの空気環境を意識的に整えることが重要です。
換気できないオフィスでの空気改善策
物理的に換気が難しい空間でも、工夫次第で空気環境の改善は可能です。
換気設備の導入
換気設備を導入する場合は「全熱交換器」が効果的でおすすめです。
この設備は、外気を取り入れつつ、室温を大きく変えずに快適な環境を維持できる高機能な換気システムです。
導入費用はかかりますが、長期的に見て健康維持と業務効率の向上につながる投資といえるでしょう。
空気清浄機・サーキュレーターの導入
空気清浄機は、ホコリやウイルス、VOC(揮発性有機化合物)などの粒子を除去し、空気を清潔に保つのに役立ちます。
また、サーキュレーターを併用することで空気の循環が生まれ、CO₂の偏りを防ぐ効果も期待できます。設置が簡単なため、すぐにでも取り入れやすい改善策です。
空気環境を整えるための観葉植物活用法
オフィスの空気改善策として、観葉植物の活用は有効な手段のひとつです。
インテリアとしての役割にとどまらず、空気の質を整える自然のフィルターとしての働きにも注目が集まっています。
観葉植物が持つ空気清浄作用
観葉植物には、光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する基本的な機能があります。
また、それに加えてホルムアルデヒドやベンゼンなどの有害物質を吸着・分解する能力を持つ種類も存在します。
NASAの研究でも、植物による空気清浄効果は科学的に立証されており、空気清浄機と異なり電力不要で持続的に作用する点が魅力です。
CO₂吸収に有効な植物の種類
たとえば「サンスベリア」「ポトス」「アレカヤシ」などは、CO₂吸収力が高く、オフィスにも適した手間のかからない植物です。
これらは光の少ない室内でも育ちやすく、水やりの頻度も少なくて済むためメンテナンスの負担が小さいのも特長です。
植物名 | 特徴 | CO₂吸収量 | おすすめ設置場所 |
---|---|---|---|
サンスベリア | 空気清浄能力が高く乾燥にも強い | 高 | デスク周り、会議室角 |
ポトス | 成長が早く吊るすことも可能 | 中 | 受付、ローパーティション付近 |
アレカヤシ | 湿度を保ちつつCO₂をよく吸収 | 高 | エントランス、窓際 |
配置のポイントとメンテナンス
植物の設置は空気の流れを遮らない場所や人の出入りが多いスペースを意識すると効果的です。
また、月に1度の葉の清掃や鉢の水はけ確認など、簡単なメンテナンスを習慣化することで健康的な成長と空気清浄効果の維持が期待できます。
業務の合間に緑を見ることで、社員の心理的リラックスにもつながります。
空気清浄機と換気設備の併用による効果
空気環境の改善には、単独の設備だけでなく、複数の手段を組み合わせる「二重対策」がより高い効果をもたらします。
換気と空気清浄の違いと役割分担
換気は「空気を入れ替えること」、空気清浄は「室内の空気をきれいにすること」です。
換気によってCO₂や湿気などを外に排出し、空気清浄機で花粉・PM2.5・ウイルスなどを除去するという役割分担を明確にすることで、空気環境のトラブルを多方面に防ぐことができます。
HEPAフィルター搭載機の選び方
空気清浄機を導入する場合、HEPAフィルター搭載モデルの選定を推奨します。
HEPAフィルターは微細な粒子まで99.97%以上除去可能で、オフィス内のハウスダストやウイルス対策に有効です。
二重対策で空気環境を安定化させる方法
たとえば、全熱交換器を導入しつつ、室内には空気清浄機を2台設置することで、CO₂濃度の上昇と浮遊物質の両方をカバーできます。
さらにサーキュレーターで空気を循環させれば、効率よく部屋全体の空気質を均一に保つことも可能です。
居心地の良いオフィス空間をつくるポイント
空気環境の改善と同時に、働きやすく快適な空間づくりも重要です。
ここでは感覚的な快適性を構成する要素や、レイアウトの工夫について紹介します。
快適性を構成する5つの要素
職場環境の快適性は、以下のような複数の要素によって決まります。
- 温度:夏は25〜28℃、冬は18〜20℃が目安です。季節ごとに調整が必要です。
- 湿度:40〜60%を保つことで、肌や喉の乾燥を防ぎ、ウイルスの活性化も抑制します。
- 空気の流れ:風が当たりすぎないように注意しつつ、適度な気流を保ちます。
- 明るさ:自然光と照明を組み合わせ、目が疲れにくい明るさを意識しましょう。
- 音環境:騒音を抑えるためにパーティションや吸音材を活用すると良いです。
空間設計とレイアウトの工夫
たとえば作業スペースと休憩スペースを分ける場合、通路を広めに取るといった工夫をすることで、心理的にも物理的にもストレスを軽減できます。
空気清浄機や観葉植物の位置を「動線の外側」に配置することで、邪魔にならず効果的に機能させることができます。
定期的な空気環境のチェック体制
CO₂センサーや温湿度計を常設し、毎日の変化を記録することで、異常値に気づきやすくなります。
また、月に1度の「空気環境チェック日」を設定し、清掃・換気・機器点検を行うと、オフィス全体の健康意識も高まります。
よくある質問
CO₂濃度の基準値は?
目安は1,000ppm以下です。これを超えると集中力や判断力に影響が出る恐れがあります。
CO₂濃度はどう測定すればよい?
市販のCO₂センサー(NDIR方式など)を設置することで、リアルタイムで数値を確認できます。
また、ダイキン工業からは、CO2濃度をリモコン画面で確認ができるCO2センサー付きベンティエールなども販売されています。
換気設備の入替や新設をご検討されている方はぜひ、ご検討ください。
換気ができない場所での対処法は?
空気清浄機の設置、サーキュレーターによる空気循環、ドアの一時開放などで空気を動かす対策が有効です。
対処法を試しても十分に換気ができていない場合や、そもそも自然換気ができない場合は換気設備の導入を検討してみましょう。
空気環境の悪さが健康に与える影響は?
頭痛・眠気・だるさなどが起こりやすく、長期的には免疫力の低下やストレスの原因にもなります。
快適な職場づくりのポイントは?
空気だけでなく、温度・湿度・明るさ・音などの総合的な要素を意識した設計が重要です。
まとめ
オフィスの空気環境は、従業員の健康や生産性に直結する重要な要素です。
CO₂濃度の管理をはじめ、観葉植物の導入や空気清浄機・換気設備の併用など、できることから取り組むことで、快適で働きやすい職場が実現できます。
また、数値に基づいた管理体制を構築することで、感覚的な判断では見逃しがちな問題点にも気づけるようになります。
オフィスの空気が変われば、働き方も変わってきます。快適なオフィス環境づくりをご検討の方は、ぜひオーソリティー空調へお気軽にご相談ください。
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