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ペリメーターゾーンとは?建築物における外部環境の影響を直接受けやすい空間について解説

2025.10.03 空調機器活用ノウハウ

ペリメーターゾーンとは?建築物における外部環境の影響を直接受けやすい空間について解説

オフィスビルや商業施設で、「窓際は夏は暑く、冬は寒い」「足元だけが冷える」といった経験はありませんか?このような外部環境の影響を直接受けやすい空間こそがペリメーターゾーンです。

快適な室内環境を設計・維持する上で、このペリメーターゾーンの特性を理解し、適切な対策を講じることは極めて重要です。なぜなら、従業員の生産性や健康、さらには建物のエネルギー効率にまで大きな影響を及ぼすからです。

この記事では、ペリメーターゾーンの定義から、外部環境がもたらす具体的な影響、そしてその課題を解決するための空調対策まで、専門的な視点から解説します。

ペリメーターゾーンとは

What is the Perimeter Zone?

ペリメーターゾーンとは建築物の外部に面した、外部環境の影響を直接受けやすい空間領域を指します。

このゾーンは、建物の快適性やエネルギー消費に大きな影響を与えるため、建築・空調設計においてその特性を深く理解することが重要です。

ここでは、ペリメーターゾーンの基本的な定義とその建築物における意味合いを解説します。

1. 外部環境の影響を受けやすい境界領域

ペリメーターゾーンは、建物の外壁や窓に接する「周縁部」を指します。

具体的には窓からの日射熱や外気の侵入、外壁を通じた熱の出入りなど、外部の温熱環境変化を最も強く受けるエリアです。

このため、室内の他の部分と比べて温度変動が大きく、快適性の確保が難しいという特性があります。

外部熱負荷の直接的影響

ペリメーターゾーンは、以下の外部熱負荷を直接的に受けます。

  • 日射熱:夏期には窓から直接太陽光が差し込み、室温を上昇させます。
  • 外気侵入:窓や外壁の隙間から外気が侵入し、夏は熱く、冬は冷たい空気をもたらします。
  • 伝導熱:外壁や窓ガラスを通じて、外部の熱が室内に伝わります(夏は熱侵入、冬は熱損失)。
  • 放射熱:冬期には窓ガラスや外壁の表面温度が低下し、窓際にいる人の体から熱が奪われる放射冷却現象が発生します。

 

2. ペリメーターゾーンとインテリアゾーンの違い

建物内部の空間は、外部環境の影響の受け方によって「ペリメーターゾーン」と「インテリアゾーン」の大きく2つに分類されます。

それぞれの特性を理解することは、適切な空調計画を立てる上で不可欠です。

外部影響を受けるペリメーターゾーンの範囲

ペリメーターゾーンの明確な範囲は建物の構造や窓の大きさ、空調方式によって異なりますが、一般的には外壁から室内へ3m〜5m程度の奥行きを持つ領域とされています。

この範囲は外部環境の変化に最も敏感に反応し、室内全体の温熱環境を左右する重要な部分です。

内部発熱が主体のインテリアゾーン

一方、インテリアゾーンは建物の内部に位置し、外部環境の影響をほとんど受けない領域です。

このゾーンの熱負荷は、主に照明、OA機器、人体からの発熱といった内部発熱によって決まります。

インテリアゾーンは比較的年間を通じて安定した温熱環境を保ちやすいという特徴があります。

参考記事:ブリーズラインで整える快適なオフィス環境とペリメーターゾーン対策

ペリメーターゾーンがオフィス環境に与える影響

ペリメーターゾーンがオフィス環境に与える影響

ペリメーターゾーンの特殊な温熱環境はオフィスで働く人々の快適性や生産性、さらには建物のエネルギー消費に多大な影響を与えます。

特に温度ムラや不快感は、深刻な問題となり得ます。

1. 温度ムラとワーカーの不快感

ペリメーターゾーンは外部環境の影響を強く受けるため、室内で最も温度ムラが発生しやすい場所です。

この温度ムラはワーカーの快適性を著しく損ないます。

参考記事:事務所衛生基準規則とは?オフィスの室温基準に沿った労働環境の作り方を解説

窓際の「暑い」「寒い」問題

夏期は窓からの強い日射熱により、窓際が異常に高温になります。

ブラインドやカーテンで日差しを遮っても、ガラス面からの放射熱で不快感が残ることがあります。

冬期は、冷たい窓ガラスや外壁からの放射冷却、窓からの冷気侵入により、窓際が非常に寒く感じられます。

暖房を強めても、窓からの冷気で足元が冷えやすい「コールドドラフト」現象が発生し、ワーカーの集中力を低下させます。

参考記事:不快指数とは? 年中快適に過ごすための方法を解説

生産性低下と健康への影響

室内の温度ムラは、ワーカーの集中力や作業効率を低下させるだけでなく、不快感によるストレスを引き起こします。

快適な室温の個人差は大きく、ある人には適温でも別の人にとっては暑すぎたり寒すぎたりすることが頻繁に発生します。

特に足元が冷えるコールドドラフトは血行不良や肩こりの原因となり、健康面への悪影響も懸念されます。

2. エネルギー消費の増加と運用コスト

ペリメーターゾーンの温度ムラを解消しようとすると、空調の過剰な運転に繋がりエネルギー消費量の増加と運用コストの増大を招きます。

空調の過剰運転による非効率

窓際の不快感を解消するために空調設定温度を調整すると、インテリアゾーンが過剰に冷やされたり暖められたりすることがあります。

例えば夏期に窓際を冷やすために全体を冷やしすぎると、インテリアゾーンでは寒さを感じる人が増え、結果として非効率なエネルギー消費に繋がります。

この非効率性は、特に大規模オフィスビルで顕著な問題となります。

対策不足による電力ピーク負荷の増大

ペリメーターゾーンにおける適切な熱負荷対策が不足していると、夏期の強い日射熱が直接室内に入り込み、エアコンが最大の冷房能力を発揮しなければならない時間が長くなります

これにより建物の電力ピーク負荷が増大し、電力契約の基本料金が高くなったり、省エネ目標の達成が困難になったりする可能性があります。

ペリメーターゾーンの課題を空調設備で解決

ペリメーターゾーンの課題を空調設備で解決

ペリメーターゾーンの温熱環境を快適に保ち、エネルギー効率を高めるためには、その特性に特化した空調対策を講じる必要があります。

単に空調能力を上げるだけでなく、建築的な工夫と空調システムの最適化が求められます。

1. 建築的な工夫による熱負荷軽減

空調システムだけに頼るのではなく、建物の設計段階からペリメーターゾーンの熱負荷を軽減する工夫を取り入れることが、根本的な解決策となります。

高性能な窓と外壁の採用

最も効果的な対策の一つは、窓や外壁の断熱性能・遮熱性能を高めることです。

  • Low-E複層ガラス:遮熱性能が高いLow-E複層ガラスを採用することで、夏期の強い日射熱の侵入を抑制し、冬期の室内からの熱損失を低減します。
  • 断熱性の高い外壁材:外壁に高断熱材を使用することで、外気からの熱の出入りを大幅に削減し、室内の温度安定性を向上させます。
  • サッシの気密性向上:隙間風を防ぐ高気密サッシを採用することで、外気の侵入を防ぎ、コールドドラフト現象を抑制します。

日射遮蔽と自然換気の活用

外部からの日射を物理的に遮蔽する対策や、自然の力を活用した換気も有効です。

  • 庇(ひさし)やルーバーの設置:窓の外側に庇や可動ルーバーを設置することで、季節や時間帯に応じて日射を遮蔽し、室内への熱侵入をコントロールします。
  • 高性能ブラインド・カーテン:室内に設置するブラインドやカーテンも、遮熱性の高いものを選ぶことで、日射熱を遮り、放射冷却を緩和する効果があります。
  • 自然換気・通風設計:適切な位置に開口部を設けることで、自然な風の流れ(通風)を利用し、エアコンに頼らずに室内の熱を排出できる設計も重要です。

2. ペリメーターゾーンに特化した空調方式

ペリメーターゾーンの特性に対応するためには、専用の空調方式や制御方法を導入することが効果的です。

ペリメーター空調方式の導入

ペリメーター空調方式は外部からの熱負荷変動が大きいペリメーターゾーンに特化した空調を行うことで、快適性と省エネ性を両立させることを目指します。

  • ファンコイルユニット(FCU):窓下に設置されることが多く、各ゾーンで独立して温度制御が可能です。温水・冷水を循環させることで空調を行います。
  • パッケージ型エアコン:個別制御が可能なため、ペリメーターゾーンの各エリアに設置することで、細やかな温度調整が可能になります。
  • 放射空調:窓際や天井、床などに放射パネルを設置し、熱放射によって空間を暖めたり冷やしたりする方式です。コールドドラフトを抑制し、不快感の少ない快適な温熱環境を実現しやすいのが特徴です。

ゾーンごとのきめ細やかな温度制御

ペリメーターゾーンとインテリアゾーンで熱負荷の変動特性が異なるため、それぞれを独立して制御できる空調システムが理想的です。

  • VAV(可変風量)システム:複数のゾーンに送風し、各ゾーンの室温に応じて風量を自動調整するシステムです。インテリアゾーンとペリメーターゾーンで異なる設定をすることで、効率的な空調が可能です。
  • 個別分散型空調:各執務エリアや窓際に小型の空調機を分散配置し、個人の好みに合わせて温度設定を可能にするシステムです。ワーカーの満足度向上に貢献します。
  • 人感センサー・日射センサーとの連動:人の在席状況や窓からの日射量をセンサーで検知し、空調の運転を自動で最適化することで、無駄なエネルギー消費を抑制します。

3. スマートビルディング技術との連携

近年の技術革新により、ペリメーターゾーンの空調管理は、よりスマートで効率的なものへと進化しています。

BEMSによるエネルギーマネジメント

BEMS(Building Energy Management System)は、建物のエネルギー使用状況をリアルタイムで監視・分析し、空調、照明、換気などの設備を統合的に制御・最適化するシステムです。

ペリメーターゾーンの熱負荷データをBEMSに取り込み、予測制御を行うことで、エネルギー消費量の削減と快適性の向上を両立させます。

参考記事:【省エネ対策】EMS導入で実現できるエネルギー最適化とは?仕組みやメリットについても解説

AI・IoTを活用した最適化

AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術を活用することで、ペリメーターゾーンの空調はさらに高度に最適化されます。

  • AIによる熱負荷予測:過去の気象データ、室温データ、日射量、オフィス内の人の活動状況などをAIが学習し、将来の熱負荷を予測することで、空調機器の運転を事前最適化します。
  • IoTセンサーネットワーク:温度、湿度、CO2濃度、人の在席状況などを細かく計測するIoTセンサーをペリメーターゾーンに多数配置し、そのデータをリアルタイムで空調システムにフィードバックすることで、ゾーンごとの最適な空調制御が可能になります。

 

よくある質問

ペリメーターゾーンの範囲は具体的にどうやって決められますか?

ペリメーターゾーンの範囲は、建物の外壁から室内へ約3m〜5mが目安とされますが、これはあくまで一般的な基準です。

実際には、窓の大きさ、ガラスの種類(単層か複層か)、外壁の断熱性能、室内の間仕切り、そして採用されている空調方式(例:ファンコイルユニットの配置)など、様々な要因によって変動します。

例えば、非常に断熱性能の高い建物や小さな窓の建物では範囲が狭まる傾向にあります。建築設計や空調設計の専門家が、建物の特性と熱負荷計算に基づいて具体的な範囲を決定します。

ペリメーターゾーン対策はオフィス以外の建物でも必要ですか?

はい、ペリメーターゾーン対策はオフィスビル以外にも、ホテル、病院、商業施設、学校、マンションなどの集合住宅など、外部に面したあらゆる建築物で必要です。

どの建物においても、窓や外壁に接する空間は外部環境の影響を強く受け、温度ムラや不快感が発生しやすいため、適切な温熱環境を確保するための対策が不可欠です。

特に、居住者が快適に過ごすことが求められるホテルや住宅では、よりきめ細やかな対策が求められます。

ペリメーターゾーン対策で最もコストを抑えやすい方法は何ですか?

初期投資を抑えつつ効果を期待できる対策としては、「高性能な窓フィルムや遮熱カーテン・ブラインドの導入」が挙げられます

これらは大規模な改修工事を伴わず、比較的低コストで日射熱の侵入を抑制し、冬期の放射冷却を緩和する効果があります。

ただし、根本的な解決には高断熱サッシへの交換や外壁の断熱改修がより効果的ですが、これらは初期費用が高くなります。

建物の状況や予算に応じて、最適な対策を段階的に実施することを検討しましょう。

ペリメーターゾーンとインテリアゾーンで異なる空調機を設置するべきですか?

理想的にはペリメーターゾーンとインテリアゾーンで独立した空調システム、またはゾーンごとに個別制御が可能な空調機を設置することが望ましいです。

熱負荷の変動要因が異なるため、それぞれを同じ空調機で一括制御しようとすると、どちらかのゾーンで快適性が損なわれたり、エネルギーの無駄が生じたりする可能性が高まります。

例えば、ペリメーターゾーンには窓下にファンコイルユニットを設置し、インテリアゾーンにはダクト式空調を設置するなど、特性に応じた空調方式の組み合わせが推奨されます。

ペリメーターゾーンの空調吹き出し口はどこに設置するのが効果的ですか?

ペリメーターゾーンの空調吹き出し口は、窓の直下または窓に沿って設置するのが最も効果的です。

具体的には、窓下に設置する「ペリメーター吹き出し口」や「ファンコイルユニット」、あるいは天井から窓面に向けて吹き出す「ライン型ディフューザー」などが有効です。

これにより、窓から侵入する冷気(コールドドラフト)や日射熱に対して直接的に空調を作用させることができ、温度ムラや不快感を効率的に抑制することが可能になります。

まとめ

ペリメーターゾーンは、建築物の外部に面し、日射熱、外気侵入、伝導熱といった外部環境の影響を最も強く受ける領域です。

このゾーンにおける温度ムラは、ワーカーの不快感、生産性の低下、さらには建物のエネルギー消費増加といった深刻な課題を引き起こします。

快適で持続可能なオフィス環境を実現するためには、ペリメーターゾーンの特性を深く理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。

高性能な窓や外壁の採用による熱負荷の根本的な軽減、庇やルーバーによる日射遮蔽、そしてペリメーターゾーンに特化した空調方式(ファンコイルユニット、放射空調など)やきめ細やかなゾーン制御の導入も有効です。

さらに、BEMSやAI・IoTといったスマートビルディング技術を活用することで、エネルギー消費を最適化しつつ、ワーカー一人ひとりの快適性を最大化することが可能になります。

ペリメーターゾーンへの適切な対策は、単に「窓際が快適になる」というだけでなく、建物のエネルギー効率を高め、運用コストを削減し、地球環境負荷の低減にも貢献します。

同時に、働く人々のストレスを軽減し、集中力と生産性を向上させることで、ワーカーのウェルビーイング(心身の健康と幸福)向上に直結しますので、ぜひ建築設計や空調設計の専門家と協働し、貴社にとって最も効果的で持続可能なペリメーターゾーン対策を実現してみてはいかがでしょうか。

参考文献