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事務所衛生基準規則と労働安全衛生規則との違いや改正への対応について解説

2026.01.23 空調機器活用ノウハウ

事務所衛生基準規則と労働安全衛生規則との違いや改正への対応について解説

オフィスの温度が暑すぎたり寒すぎたり、あるいはトイレや休憩室の衛生状態が不十分である場合、社員の集中力や健康は著しく低下します。

こうした問題を未然に防ぎ、労働者の健康と快適性を確保するために、国が定めているのが事務所衛生基準規則です。この規則は、上位法である労働安全衛生規則の一部として、すべての事業者に適用されますが、具体的な管理基準(温度、換気、清掃など)が多岐にわたるため、何から手をつけて良いか迷う担当者も多いでしょう。

実際、事務所衛生基準規則という名前だけではそれがすべての企業に適用されることや、単なる清掃ではなく科学的な数値に基づいた義務であることまでは伝わりにくいものです。特に近年はテレワークの普及や受動喫煙、熱中症への対策強化など、規則も社会情勢に合わせて常に改正されています。

この記事では、事務所衛生基準規則の基本から混同しやすい法令との関係性、そして直近の改正動向まで、実務担当者が何をすべきかが明確になるよう具体的に解説します。

事務所衛生基準規則とは

事務所衛生基準規則とは

事務所衛生基準規則は企業の総務・施設管理担当者が労働者の健康を守るという観点から、最も深く関わるべき法律の一つです。この規則は規模や業種にかかわらず、労働者が働く環境を物理的、衛生的に守るための具体的な義務と最低限のラインを定めています。

規則の正式な位置づけと労働安全衛生規則との違い

事務所衛生基準規則は労働安全衛生法という親法の下にある、厚生労働省令の一つです。

労働安全衛生法が、労働者の安全と健康を確保するための基本的枠組み(例:安全衛生管理体制、健康診断の実施など)を定めているのに対し、事務所衛生基準規則はその枠組みの中で、事務所という環境に特化して具体的な基準値や設備要件を定める役割を担っています。

たとえば、労働安全衛生法が事業者は労働者の健康を守るために環境を衛生的に保ちなさいと大枠で定めているのに対し、事務所衛生基準規則はその環境の室温は17℃以上28℃以下にしなさいと、実務で判断可能な数値を示しています。つまり、規則を遵守することは、上位法である労働安全衛生法の要求に応えるための実践的な行動そのものなのです。

適用対象となる事務所の定義と適用範囲

この規則の適用対象は、労働者が働くすべての事務所です。ここでいう事務所とは事務作業を主として行う場所を指しますが、その定義は非常に幅広いです。

たとえば、大企業のオフィスビルはもちろん、中小企業の管理部門、店舗のバックヤードにある事務スペース、あるいは倉庫内の一角にある事務所スペースなど、規模や業種に関係なく事務作業が行われるすべての場所が対象となります。

これは、労働契約法において事業者が負う安全配慮義務に基づくものであり、うちの会社は小さいから関係ないという例外は原則としてありません。労働者を一人でも雇用し、その人が事務作業を行っている場所であれば、この規則の定める温度や換気の基準をクリアする義務が発生すると認識すべきでしょう。

規則を遵守しなかった場合に発生する罰則と行政指導

事務所衛生基準規則を遵守しなかった場合、事業者には罰則や行政指導のリスクが生じます。この規則は労働者の健康を直接守るための基準であるため、違反は軽視できません。

まず、労働基準監督署による行政指導が入ります。たとえば、夏場に室温が28℃を超えている状態が常態化している場合など、監督官が立ち入り検査で不適切な環境を確認した場合、改善を求める指導が入ります。この指導に従わず改善が認められない場合は、労働安全衛生法に基づく罰則の対象となる可能性があります。

具体的には懲役または罰金が科される規定が設けられています。また、罰則以上に深刻なのが、不適切な環境が原因で社員が体調を崩したり、労災が発生したりした場合に、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償請求を受けるリスクです。

法令遵守は、社員を守るだけでなく、企業経営のリスクヘッジにも直結するのです。

参考記事:事務所衛生基準規則とは?オフィスの室温基準に沿った労働環境の作り方を解説

環境・衛生に関する基準値

環境・衛生に関する基準値

事務所衛生基準規則の中で総務・施設管理担当者が日常的に監視・管理すべきなのが、具体的な数値基準です。これらの基準はすべて科学的な根拠に基づき、労働者が最も健康的に働ける環境を保証するために定められています。

事務所内の温度・湿度に関する基準と測定の頻度

オフィスの温度は何度にすべきかという長年の議論に、この規則は明確な答えを与えています。

規則では室温について17℃以上28℃以下に保つよう定めています。また、湿度については、40%以上70%以下に保つことが望ましいとされています。この基準は、暑すぎず寒すぎず、空気中の水分量も適切に保つことで、社員の快適性と集中力を維持するためのものです。

重要なのは、この温度を暖房または冷房の開始時および終了時に測定し、記録しておく義務があることです。特に冷暖房をフル稼働させる夏場と冬場はこの基準値を外れていないかを常に意識して運用することが求められます。

窓際や空調機の直下など、場所によって温度ムラが生じやすいオフィスでは、複数箇所での測定が必要になる場合もあるでしょう。

快適な執務環境を保証する換気・空気環境の基準

事務所内の空気は外部から汚染物質が侵入したり、人が呼吸することで二酸化炭素が増えたりするため、常に新鮮に保たれなければなりません。これも規則の定める重要な項目の一つです。

換気設備の管理基準は汚れた空気を排出し、新鮮な空気を取り込む必要換気量を確保することに主眼が置かれています。事務所衛生基準規則では、居室の空気の汚染の状況を測定し、その結果に応じて換気設備を調整する義務を課しています。

具体的には、この換気が適切に行われているかどうかを測る最も重要な指標が、二酸化炭素(CO2)濃度です。

必要換気量と二酸化炭素濃度の基準値

空気環境に関する基準値として、二酸化炭素(CO2)濃度を100万分の1000(1,000 ppm)以下に保つことが義務付けられています。CO2濃度がこの基準を超えると、頭痛や眠気、集中力の低下を引き起こす可能性が高まるため、換気が不足していると判断されます。

この基準をクリアするために必要な換気量が、必要換気量です。これは、法律の基準ではありませんが、建物の構造や利用人数に応じて必要な空気の入れ替え量を計算するための専門的な指標です。一般的には、一人あたり毎時30立方メートルの換気量が目安とされており、これに基づき換気設備が設計されます。

管理者は、CO2測定器を活用して定期的に濃度を確認し、基準値を超えそうになったら換気量を増やす、あるいは窓を開けるといった積極的な対応を行う必要があります。

参考記事:業務効率は空気で決まる?オフィスの換気とCO₂濃度の関係

清潔保持と採光に関する最低限の基準

職場の快適性は、温度や換気だけでなく、清潔さや明るさといった要素にも左右されます。規則では、これらの項目についても最低限の基準を定めています。

規則では、事務所の清潔保持、すなわち掃除、廃棄物の処理、ネズミや害虫の防除について、適切に実施する義務を定めています。単に見た目がきれいなだけでなく、感染症や健康被害を防ぐための措置が求められます。また、採光(照明)についても、執務面の照度に関する具体的な基準があります。

通常の事務作業を行う執務面では70ルクス以上の照度を確保しなければなりません。これは、暗すぎると目の疲労や集中力の低下につながるためです。特定の精密な作業を行う場所では、さらに高い照度が求められる場合もあります。

明るさについても測定器で確認し、照明の増設や配置変更などで基準を満たすよう調整することが必要です。

参考サイト:建築における採光基準とは?採光義務や計算方法を解説 – 業務用エアコンの取付工事と空間デザインは【ReAir-リエア-】

施設・設備に関する基準と対応義務

施設・設備に関する基準と対応義務

事務所衛生基準規則は執務スペースだけでなく、労働者が利用する付帯設備に関しても、衛生的な環境とプライバシーを守るための詳細な基準を定めています。

プライバシーを守るトイレの設備基準

規則ではトイレの設置について、労働者数に応じた数を設けること、そして男性用と女性用を区別することを原則として定めています。これは、労働者の生理現象に関わるプライバシーと尊厳を守るための極めて重要な基準です。

特に女性労働者が増加している現代においては、女性用の便所の数が適切であるか、そして清掃や換気が徹底されているかが、従業員満足度に直結します。トイレは単にあるだけでなく、法律で定められた換気設備や照明を設け、常に清潔に維持管理することが義務付けられています。

汚れたトイレや数が不足しているトイレは、労働者の健康と衛生を害するだけでなく、ハラスメントや不公平感の原因となることもあるため、管理者としては設備投資を含めて真剣に取り組むべき課題です。

疲労回復と健康確保のための休養室・休養所に関する基準

労働者が心身の疲労を回復し、健康を確保するため、規則では休養室または休養所の設置についても定めています。

常時50人以上の労働者または女性30人以上の労働者を使用する場合、休養室または休養所を設けなければならないとされています。これは、体調の優れない労働者が一時的に休息したり、女性労働者が生理休暇中に利用したりするためのものです。

設置する場所は静かでプライバシーが確保できるような配慮が必要です。特に女性用の休養室は、男性用とは区別して設ける必要があります。また、事業者は、横になれる設備を設けることや、救急用具を備え付けることなど、労働者が安全かつ快適に休養できるための設備要件を満たす義務があります。

騒音・振動防止と保護具に関する管理義務

事務所衛生基準規則は環境衛生に関する基準だけでなく、労働者の聴力や身体の安全を守るための騒音・振動防止保護具の管理についても定めています。

たとえば、著しい騒音や振動を発生させる機械を事務所内に設置する場合、その防音・防振対策を講じる義務があります。また、特定の有害物質を扱う作業を行う場合は、それに応じた保護具(マスク、手袋など)を労働者に支給し、その保管や点検を適切に行う義務も管理者には課せられています。

騒音や振動は長期間曝露されることで聴力障害や体調不良につながる可能性があるため、管理者としては騒音レベルを定期的に測定し、基準値を超えないように対策を講じることが求められます。これは単なる衛生の範疇を超え、安全の領域にも踏み込んでいる規定です。

法改正への対応とガイドラインの活用

法改正への対応とガイドラインの活用

事務所衛生基準規則は社会の働き方や健康に関する知見が深まるにつれて、常に改正されています。管理者(事業者)はこれらの最新動向を把握し、迅速に対応する義務があります。

受動喫煙対策や熱中症対策の法改正

近年、労働者の健康管理における社会的な要求が高まっており、規則にもその変化が反映されています。特に重要な改正ポイントとして、受動喫煙対策と熱中症対策が挙げられます。

受動喫煙対策に関しては、2020年4月の改正健康増進法の全面施行に伴い、事務所内での喫煙場所の設置基準や喫煙室の適切な換気・分煙に関する基準が厳格化されました。また、近年の猛暑を受け、熱中症対策についても具体的な義務が強化されています。

事業者は「作業場所の温度、湿度、ふく射熱などの状況に応じた対策を講じなければならない」と定められ、休憩時間の延長や作業時間の短縮、適切な冷房設備の設置などが求められています。これらの改正は単なる推奨事項ではなく、法令上の義務として迅速に対応する必要があります。

参考記事:「健康増進法」の一部改正に伴う分煙対策に! 換気システムによる分煙方法のご紹介! 

参考サイト:熱中症対策の義務化とは?労働安全衛生規則改正と施工内容について解説 – 業務用エアコンの取付工事と空間デザインは【ReAir-リエア-】

VDT作業(情報機器作業)に関する基準と対策ガイドライン

パソコンやスマートフォンなど、VDT(Visual Display Terminals)を使用した作業は現代の事務所業務の大部分を占めています。長時間のVDT作業は、眼精疲労、肩こり、精神的なストレスにつながるため、規則ではこれに関する基準も定めています。

規則自体はVDT作業に関する基本的な要件を定めていますが、より具体的な対策については厚生労働省が策定した「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を活用することが推奨されます。このガイドラインでは連続作業時間、休憩時間(1時間ごとに10〜15分)、画面の明るさ・高さ、反射防止措置など、詳細な対策が示されています。

管理者としてはガイドラインに基づき、社員への作業方法の指導や、昇降式デスク、ブルーライトカットフィルターの導入といった設備環境の整備を進めるべきです。

テレワーク環境への規則の適用と管理者の対応

働き方改革やパンデミックを経てテレワークが一般的になりましたが、事務所衛生基準規則がテレワーク環境にどう適用されるのかという疑問は多くの企業が抱えています。

基本的な考え方として、規則のすべての条項が労働者の自宅に適用されるわけではありません。規則が直接適用されるのは会社が管理責任を持つ事務所です。しかし、事業者は労働安全衛生法に基づき、テレワークを行う労働者に対しても安全配慮義務を負っています。

そのため、管理者は、労働者に対して自宅での作業環境(照明、椅子の高さ、室温など)についてガイドラインを提供し、自己点検を促すなどの配慮を行う必要があります。あくまで協力の範囲内となりますが、テレワーク環境でも健康を害さないよう企業としての責任を果たす姿勢が求められます。

よくある質問

Q1. 事務所衛生基準規則に違反した場合、どのような罰則がありますか

規則自体に直接的な罰則規定はありませんが、上位法である労働安全衛生法に基づく罰則が適用されます。

規則で定められた義務に違反し、監督署からの改善命令などに従わない場合、労働安全衛生法第119条や120条に基づき、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金などが科される可能性があります。

罰則適用は重いケースに限られますが、行政指導や企業名の公表は、社会的な信用を失う大きなリスクとなります。

Q2. 事務所の室温が基準値を外れても、すぐに罰則を受けますか

すぐに罰則を受けることはありませんが、改善指導の対象となります。

室温の基準(17℃以上28℃以下)は事業者に対して保つように努めなければならないという強い努力義務であり、逸脱した場合でも直ちに違法となるわけではありません。ただし長時間にわたり大きく逸脱している場合や労働者から苦情が出ている場合は、労働基準監督署による改善指導が入ります。

極端な場合は安全配慮義務違反となるため、エアコンの故障や設定ミスがないか日常的にチェックし、記録を残すことが重要です。

Q3. ビル管理法(特定建築物)の基準と異なる場合、どちらを優先すべきですか

原則として、より厳しい基準を優先して適用すべきです。

事務所衛生基準規則は労働者の健康をビル管理法(建築物衛生法)は建物の利用者の公衆衛生を目的としています。たとえばCO2濃度の基準はどちらの法律にもありますが、適用される事務所が特定建築物にも該当する場合、両方の基準を満たす必要があります。

一般的に特定建築物の基準(例:CO2濃度2ヶ月に1回測定)の方が、事務所衛生基準規則の基準(例:換気設備の点検)よりも細かく厳格に定められていることが多いため、厳しい方の基準を採用し両方を満たす管理体制を構築することが最も安全です。

Q4. 産業医や衛生管理者は、この規則の遵守にどう関わりますか

産業医や衛生管理者はこの規則の遵守状況をチェックし、管理者へ助言を行う重要な役割を担います。

衛生管理者は労働安全衛生規則に基づき、作業環境の測定結果の評価や、作業方法の改善、衛生教育の実施といった業務を行います。事務所衛生基準規則で定められた温度、湿度、換気、清掃などの基準が満たされているかを専門的な視点で確認し、問題があれば管理者に対して改善を提言する義務があります。

まとめ

事務所衛生基準規則は、すべての企業にとって、働く人の健康と快適な環境を保証するための法的義務を定めた、非常に実践的なルールです。

この規則は上位法である労働安全衛生規則の一部として、室温、換気、トイレ、休憩室に至るまで、働く環境の具体的な最低限の基準を示しています。遵守を怠ることは行政指導や罰則のリスクだけでなく、社員の体調不良や集中力低下を招き、企業の生産性を損なうことにつながります。

管理者は、この規則を単なる形式的な義務としてではなく、社員への安全配慮義務を果たすための行動指針として捉える必要があります。CO2濃度の定期測定、VDT作業ガイドラインへの対応、そして最新の法改正(熱中症、受動喫煙)への迅速な対応を通じて、法令をクリアしたその先の真に快適な職場環境の実現を目指しましょう。

参考文献


空調設備の設置から、内装設計・工事を含む空間デザイン、そして最新設備による快適な空気環境の施工プランまで。

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