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建築基準法に関わる換気規定や換気設備について解説
2025.07.11 空調機器活用ノウハウ

建築基準法における換気規定は、利用者の健康維持と建物の健全性を保つための最低限のルールです。主なポイントは、床面積の20分の1以上の有効開口部(窓)を確保すること、窓がない場合は機械換気設備を導入し、用途に応じた必要換気量(1人あたり20立方メートル毎時など)を満たすことです。また、2003年以降はシックハウス対策として、全居室に0.5回/時以上の常時換気が義務付けられています。これらの法的基準を正確に理解し、計算根拠を明確にすることが、確認申請の手戻りを防ぐ最短ルートとなります。
店舗やオフィスの設計・施工現場において、避けて通れないのが建築基準法に基づく換気性能の担保です。特にリノベーション物件では「開口部面積が1/20に満たない」「既存の換気扇では法定換気量を満たせない」といったトラブルが頻発します。
換気設備の不備は、建築確認が通らないリスクだけでなく、竣工後の空気環境の悪化や、最悪の場合は是正工事による多額の損失を招きかねません。
この記事では、空調・換気のプロ視点から、複雑な法規を実務レベルまで落とし込み、必要換気量の計算から無窓居室への対策、確認申請を円滑に進めるための勘所までを具体的に提示します。法令を正しく理解し、手戻りのない確実な計画立案にお役立てください。
目次
換気設備に関わる建築基準法の規定と実務対応

店舗やオフィスの設計・施工現場において、避けて通れないのが建築基準法に基づく換気性能の担保です。特にリノベーション物件では「開口部面積が1/20に満たない」「既存の換気扇では法定換気量を満たせない」といったトラブルが頻発します。
換気設備の不備は、建築確認が通らないリスクだけでなく、竣工後の空気環境の悪化や、最悪の場合は是正工事による多額の損失を招きかねません。本記事では、空調・換気のプロ視点から、複雑な法規を実務レベルまで落とし込み、必要換気量の計算から無窓居室への対策、確認申請を円滑に進めるための勘所までを具体的に提示します。
建築基準法第28条 有効開口面積1/20の判定基準

建築基準法第28条では、人が継続的に使用する部屋(居室)に対し、自然換気のための窓などの開口部を設けることを求めています。この基準値が床面積の20分の1以上という数字です。しかし、現代のビル設計や店舗物件では、この基準を窓だけでクリアすることは容易ではありません。
居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
引用:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)|e-Gov 法令検索
床面積比5%(1/20)を欠いた際の機械換気設備への切替判断
設計対象の居室において、窓などの有効開口面積が床面積の5%(20分の1)を下回る場合、その部屋は法律上、自然換気だけでは不十分な部屋とみなされます。この不足分を補うために、機械換気設備(換気扇や空調システム)の設置が法的に義務付けられます。
都市部のビルイン店舗や地下区画のほとんどがこの1/20を満たせないため、機械換気設備の導入を前提とした設計が進められます。窓がある場合でも、家具や什器で窓が塞がれる計画であれば、有効面積に算入できない可能性があるため注意が必要です。
排煙窓・採光窓との有効面積算出方法の差異
換気のための開口部面積は、採光や排煙のための計算方法とは、判定基準や有効とみなされる構造が異なります。例えば、採光では隣地境界線からの距離が厳しく問われますが、換気では外気に直接面していることと開放できる構造であることが重視されます。以下の表は、それぞれの基準の概要を比較したものです。
| 判定項目 | 換気(第28条) | 採光(第28条) | 排煙(第126条の2) |
|---|---|---|---|
| 主要な基準値 | 床面積の1/20以上 | 床面積の1/5〜1/10以上 | 床面積の1/50以上 |
| 有効とみなす構造 | 開放可能な部分の面積 | ガラス面等の透過面積 | 天井から80cm以内の開放面積 |
無窓居室判定による火災報知器・内装制限への波及リスク
換気上の基準(有効開口面積が床面積の5%)を満たせない居室は、建築基準法上の無窓居室(むそうきょしつ)として扱われる場合があります。無窓居室判定を受けると、換気設備が必要になるだけでなく、避難器具の設置義務や内装仕上げの制限(不燃化など)、さらには消防法における自動火災報知設備の設置基準が厳しくなるなど、コストやデザインに多大な影響を及ぼします。初期段階で窓面積と法的区分を整理しておかないと、実施設計や工事段階で大幅な予算超過を招く恐れがあります。物件の窓条件が厳しい場合は、他法令への影響範囲を含め、早めに専門家へ相談して全体計画を立てることが推奨されます。
居室用途別の法定換気量算出と計算実務

機械換気設備を導入する場合、その部屋の用途や人数に合わせてどのくらいの風量で空気を入れ替えるかを計算で証明しなければなりません。これが必要換気量の算出です。建築基準法施行令第20条の2に基づき、適切な換気量を導き出します。
1人あたり20m3/hを起点とする必要換気量の計算式
建築基準法における機械換気設備の基本となる計算式は、V = 20 × Af / Nという形(または1人あたり20立方メートル毎時の積算)で考えられます。ここでいう20とは、成人1人が1時間あたりに必要とする新鮮な空気の量(立方メートル)を指します。
【必要換気量の基本計算式】
必要換気量(m3/h) = 室内容積(m3) × 必要換気回数(回/h)
または
必要換気量(m3/h) = 20 × 床面積(m2) ÷ 1人あたりの占有面積(m2)
※1人あたりの占有面積は用途により異なります(例:事務所=5m2、飲食店=3m2)。
事務所・店舗・厨房における換気回数設定の目安
法定の20立方メートル毎時・人はあくまで最低ラインです。実際の実務では、臭気や熱気がこもりやすい空間に対し、部屋の空気が1時間に何回入れ替わるかという換気回数の視点でも設計を行います。以下の表は、一般的な設計目安です。
| 室の種類 | 推奨換気回数(回/時) | 主な目的 |
|---|---|---|
| 一般事務所 | 4 〜 6 | 二酸化炭素濃度の抑制 |
| 飲食店(客席) | 10 〜 15 | 臭気・煙等の対策 |
| 厨房(火気使用) | 20 〜 40 | 燃焼排ガス・熱気の排出 |
天井高3m超の空間における算出有効高さの緩和規定
劇場のロビーや吹き抜けのある店舗など、天井が著しく高い空間では室容積が膨大になります。建築基準法では、天井の高さが3メートルを超える場合、計算上の高さを3メートルとして扱うことができる緩和規定があります。これにより、居住エリア(床面に近い部分)の空気環境が維持されていれば、上部の余剰空間を含めた過大な換気設計を避けることが可能です。大規模空間の設備設計は、この緩和規定の適用可否でコストが大きく変わるため、専門家による詳細なシミュレーションを検討することをお勧めします。
シックハウス対策としての0.5回/h常時換気義務

2003年(平成15年)7月1日に施行された改正建築基準法により、それまでの換気規定に加え、新たにシックハウス対策としての換気義務が追加されました。建材等から発生するホルムアルデヒド等の化学物質による健康被害を防ぐことが目的です。
2003年改正以降の24時間換気設備の設置義務
かつての日本の建物は隙間風による自然な換気がありましたが、アルミサッシの普及や工法の進化により高気密化が進みました。その結果、室内の化学物質が排出されにくくなり、シックハウス症候群が社会問題となりました。これを受けて、原則として全ての建築物の居室に、24時間稼働し続ける機械換気設備の設置が義務付けられたのです。
これにより、住空間全体の空気が1時間あたり0.5回以上入れ替わるよう設計されなければなりません。つまり、室内の体積に対して0.5回/時以上の換気回数が確保されていれば、法律上の義務を果たしているとみなされます。
全居室対象の「0.5回/h」常時換気経路の確保方法
常時換気を達成するためには、単に換気扇を付けるだけでなく、空気の入り口から出口までの通り道を設計しなければなりません。
【常時換気経路の設計ポイント】
- 外壁の給気口(ガラリ等)から新鮮な空気を取り込む。
- 建具(ドア等)にアンダーカット(10mm程度の隙間)を設け、空気が流れるようにする。
- 水回り(トイレ等)に設置されたファンから汚れた空気を集中排気する。
機械換気方式(第1種・第2種・第3種)の特性と選定基準
建築基準法に適合する機械換気方式には、主に以下の3つの種類があります。建物の用途やコスト、求められる空気の質によって使い分けます。
- 第1種換気(給排気ともに機械):温度・湿度管理がしやすく空気品質が安定するが、設備コストは高め。全熱交換器(ロスナイ等)による省エネ効果が高い。
- 第2種換気(給気のみ機械):室内を正圧に保ち外部からの汚染を防ぐ。医療施設等で使われるが一般オフィスには過剰。
- 第3種換気(排気のみ機械):低コストで設置が容易。事務所等の小規模空間で最も普及している。
換気基準を満たせない場合の法的代替措置と緩和規定

現場ではどうしても窓が取れない、あるいはダクトを通すスペースがないといった制約に直面します。そうした場合に法律が認めている代替手段や緩和策を知っておくことが重要です。
換気計算書の提出による機械換気での適合証明
建築基準法第28条第2項ただし書きの規定により、窓面積が不足していても、政令で定める技術的基準に適合する機械換気設備を設ければ法適合とみなされます。この適合を証明する書類が換気計算書です。計算書には、居室の面積、想定人数、必要換気量、そして選定した機器の最大風量が有効換気量を上回っていることを明記し、確認申請で説明します。
ビルイン型テナントや用途地域による構造制限への対応策
大規模ビルのテナント区画など、個別に外壁へ穴を開けられない物件では、ビル全体の中央管理換気システムを利用することになります。この場合、ビル側から供給される外気量が、自店舗の必要換気量を満たしているかを確認しなければなりません。もし不足する場合は、高性能なフィルターを備えた循環型空調や既存ダクトの増設など、ビルオーナー側との高度な技術的協議が必要になります。
アンダーカット・スリット設計による換気経路の有効化
間仕切り壁を増やして個室を多用する設計では、各部屋に排気ファンを設けるとコストが上がります。そこで活用されるのが経路の共通化です。壁の上部にスリットを設けたり、ドアの下部を1cm程度開けるアンダーカットを施すことで、空気の流れを設計し、その部屋を大きな換気経路の一部として扱うことができます。判断が分かれる複雑な区画構成の場合は、行政協議や設備設計の早期検討が手戻りを防ぐ最大のポイントです。
確認申請をスムーズに通すための注意点
設計段階では基準を満たしていたとしても、施工や申請の過程で不備が生じることがあります。審査官がチェックするポイントを理解し、不備のない準備を行いましょう。
機器仕様書と計算結果の整合性
最も多い不備は、計算書上の数値と添付された機器図面の数値が一致していないケースです。特に強・弱の切り替えがある換気扇の場合、常時換気としては弱の風量、法定換気としては強の風量というように、どの運転モードの数値で計算したかを明確にする必要があります。また、設置地域の電源周波数(50Hz/60Hz)に合ったスペック表が添付されているかを確認しましょう。
ダクト配管の圧損と有効換気量の減衰計算
換気扇のカタログに記載されている風量は、障害物がない状態の数値であることが多いです。実際にはダクトの長さや曲がりによる「圧力損失」で風量は低下します。確認申請では、この抵抗を考慮した有効換気量(実効風量)を算出することが求められます。抵抗計算を怠り、カタログ値ギリギリの機器を選定してしまうと、完了検査時の測定で風量不足が発覚し、やり直し工事になるリスクがあります。
計画変更・仕様変更時の再申請要否
工事途中で間仕切りの位置が変わったり、換気扇の型番を変更したりする場合、計画変更申請が必要になるかどうかの判断が必要です。一般的に、換気性能を向上させる変更や同等以上のスペックへの変更であれば、軽微な変更として完了検査時の報告で済むことが多いです。しかし、換気経路そのものが変わるような変更は、計画変更申請が必要となり工期に遅れが生じます。判断に迷う変更が生じた際は、建築主事や指定確認検査機関への事前確認を速やかに行うべきです。
よくある質問
Q:地下室や窓のない区画での店舗認可条件は?
機械換気設備によって法定換気量が確保されていれば、地下や無窓区画でも認可されます。ただし、地下の場合は防炎規制や避難規定が厳しくなるため、総合的な法規チェックが必要です。
Q:火気使用室の換気量算出におけるK値120の適用範囲は?
ガスコンロなどの燃焼器具を使い、排気フード(笠)が設置されている場合にK=120を用います(フードなしの場合はK=400)。IHクッキングヒーターの場合は、燃焼ガスの発生がないためこの計算は不要です。
Q:既存換気扇のスペック不明時における計算根拠は?
メーカーのアーカイブ等で仕様を特定するか、実測調査を行う必要があります。資料が一切ない場合は、風速計による実測値を根拠とするか、最新の換気扇へ交換する方がリスクを抑えられます。
Q:既存不適格物件におけるリノベーション時の遡及適用範囲は?
原則として、大規模な修繕や用途変更を行う部分については、現行法への適合が求められます。部分的な内装改修であれば免除されるケースもありますが、管轄の建築主事との事前協議が必須です。
まとめ
換気設備に関する建築基準法の規定は、利用者の安全と健康を守るための極めて重要な指針です。床面積の1/20基準や1人あたり20立方メートル毎時の換気量、シックハウス対策としての常時換気義務など、複数の基準を同時に満たす必要があります。これらの法規を軽視すると、建築確認が通らないだけでなく、是正工事による多額の損失を招くことになります。
特に複雑な構造の店舗や、法改正前の古いビルでのリノベーションでは、個別の案件ごとに最適な設計回答が異なります。手戻りを防ぎ、コストパフォーマンスの高い換気システムを構築するためには、計画の初期段階でプロの知見を取り入れることが賢明です。法的適合性の判断や換気計算でお困りの際は、現場経験豊富な専門家へぜひ一度ご相談ください。
空調・換気設備の設置から、内装設計・工事を含む空間デザイン、そして快適な空気環境の施工プランまで。
空間のトータルコーディネートは、オーソリティー空調にぜひお任せください。
参考文献
- 令和4年改正 建築基準法について|国土交通省
- 換気に関する基礎知識~ 換気の方法と評価 ~|日本環境感染学会 医療環境委員会セミナー
- 建築物における効率的な換気の促進に関する取組事例集|国土交通省住宅局
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