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クリーンルームの換気回数と空気品質基準とは
2023.11.24 空調機器導入ノウハウ
クリーンルームは室内の空気清浄度が確保された部屋のことで、製品を作ったり手術をしたりするときに利用されます。
このクリーンルームの清浄度を守るために大切なことは、換気とその回数です。
ここでは日本における空気質の基準項目やクリーンルームの仕組み、気流方式、換気方式、そして換気回数についてご紹介していきます。
目次
空気質における日本の基準とは
適切な室内環境の実現のためには、温度・湿度・清浄度・気流の4つの要素を調節しなければなりません。
日本では、国民の健康を守るための快適な空気環境が、建築基準法や労働安全衛生法、建築物衛生法など複数の法律で定められています。
空気質が良いということは、きれいな空気であるということです。
また、どのくらいきれいな空気であるかを「清浄度」という言葉を使って表します。
一般的な環境・製造プロセスなどそれぞれに清浄度があり、日本における一般空調環境での環境基準項目としては、以下のようなものがあります。
- 浮遊粉塵の量
- 一酸化炭素の含有率
- 二酸化炭素の含有率
- 温度
- 相対湿度
- 気流
- ホルムアルデヒドの量
上記項目の清浄度を実現し、管理された部屋をクリーンルームと呼びます。
クリーンルームの仕組み・気流方式・換気方式
クリーンルームとは、空気中の微粒子が少ない部屋のことです。
防塵室とも呼ばれており、その使用目的によって「インダストリアルクリーンルーム」と「バイオロジカルクリーンルーム」の2つに分類されます。
バイオロジカルクリーンルーム:医薬品・遺伝子工学・手術室などの医療食品分野向けで、空気中の浮遊微生物などが管理の対象
そして、空気中の微粒子がどの程度少ないか(どのくらいきれいなのか)についての規格はクラス(清浄度)で表します。
1㎥当たりの空気中に含まれる微粒子の数でクラスが決まり、クラスの数字が小さい方が清浄度が高いということになります。
クリーンルームの仕組み
クリーンルームの環境を維持するためには、「異物を持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「排除する」という原則を守らなくてはなりません。
そのためクリーンルームでは、異物の持ち込みや発生を防ぐために機器や材料は基本的にすべて洗浄し、人が出入りする際にはエアシャワーを浴び、ゴミや細菌などを徹底的に除去してから入室します。
クリーンルームは気密がとられていて、天井に設置された「ファンフィルターユニット(FFU)」から清浄な空気が送られます。
ファンフィルターユニットは、HEPAフィルターやULPAフィルターといった高性能フィルターとファンが一体化した装置です。
そして床に近い場所に排気経路を設け、ルーム内の浮遊物を含む空気を外部に押し出します。
内部は外部よりも圧力が高くなっているため、外部からは空気が入らない構造です。
クリーンルームの代表的な気流方式
気流方式は主に、非一方向流方式、垂直一方向流方式、水平一方向流方式に分けられます。
垂直一方向流方式:天井全面にHEPAフィルターを設置し、床下全面を吸込口として気流を垂直一方向に流す方式
水平一方向流方式:壁一面にHEPAフィルターを並べて吹出口、対面の壁または天井面を吸込口とし、水平方向に均一な気流をつくる方式
クリーンルームの換気方式
クリーンルームの換気方法は、主にオールフレッシュ型と循環型の2つがあります。
循環方式:室内の空気を循環させてファンフィルターユニットに給気する方法
クリーン度(清浄度)に応じて換気回数が変化する
清浄度クラスを維持・管理するために大切なもののひとつは換気です。
そして、換気回数とは、部屋の空気が1時間あたりに何回入れ替わるかを表した数値のことを指します。
ただし、この換気回数は清浄度クラスと換気方式によっても異なります。
【換気回数の出し方】
必要換気回数=必要換気量÷部屋の容積
【必要換気量の求め方:1人あたりの専有面積から求める方法】
必要換気量(㎥/h)=20(㎥/h・人)×床面積(㎡)÷1人あたりの占有面積(㎡)*1
*1 建築基準法施行令第20条の2第2号に基づく
【必要換気量の求め方:床面積当たりの必要換気量から求める方法】
必要換気量(㎥/h)=室の床面積当たりの換気量(㎥/㎡・h)x 室面積(㎡)*2
*2 空調・衛生工学会規格「HASS 102 1972」に基づく
【清浄度クラス】
塵埃径 | ||||||
クラス | 0.1μm | 0.2μm | 0.3μm | 0.5μm | 1μm | 5μm |
1 | 10 | 2 | ||||
2 | 100 | 24 | 10 | |||
3 | 1,000 | 237 | 102 | 35 | ||
4 | 10,000 | 2,370 | 1,020 | 352 | 83 | |
5 | 100,000 | 23,700 | 10,200 | 3,520 | 832 | |
6 | 1,000,000 | 237,000 | 102,000 | 35,200 | 8,320 | 293 |
7 | 352,000 | 83,200 | 2,930 | |||
8 | 3,520,000 | 8,302,000 | 29,300 | |||
9 | 35,200,000 | 8,320,000 | 293,000 |
クラスの数字が小さいほど清浄度の高い空気ということです。
さらにイメージがしやすいよう、クラスに応じた用途例の図を引用します。
画像出典:株式会社マツシマメジャテック「【徹底解説】クリーンルームとは?求められるクラス・服装・換気回数」
クリーンルームの換気回数の目安
内部の発塵量やそのほかの要因によって換気回数は異なります。
そのため、クラス別に一般的な換気回数をご紹介いたしますが、あくまでも目安としてご覧ください。
ISO規格でのクラス5:300回程度
ISO規格でのクラス6:80回程度
ISO規格でのクラス7:40回程度
ISO規格でのクラス8:20回程度
参考:健康経営優良法人太平洋建材株式会社「クリーンルームのクラス」
クリーンルームの清浄度を守るために換気回数は重要
クリーンルームの清浄度が保たれなければ、製品不良や細菌感染などさまざまな重大トラブルに発展する恐れがあります。
そのため、決められたルールを守り、クリーンルームの清浄度を維持することが大切です。
そして、導入設備の選択時には総合的に考えての判断が必要なため、プロに相談することをおすすめします。
換気設備の設置から、最適な空気をつくる最新設備の施工プランご提案まで、空調のトータルコーディネートができるオーソリティー空調にお任せください。
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