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店舗を開業する際の業務用エアコンの選び方とエアコンの設置工事について解説
2023.05.26 空調機器活用ノウハウ
新しく店舗を開業する際、さまざまな点を考慮する中で、「どのようなエアコンを設置するのか」についても考える必要があります。
店舗で使用する業務用のエアコンは、さまざまな形状や馬力のものがあるため、お店の雰囲気や広さ、業態に合わせて適切なものを選定しなくてはなりません。
この記事では、これから新しく店舗を開業する方に向けて「適切な空調機器の選び方」を解説していきます。
近年重要視されている換気についても解説していますので、ぜひご参考ください。
▶️関連記事:飲食店に適した業務用エアコンとは
目次
業務用エアコンとルームエアコンの違い
業務用エアコンと家庭用のルームエアコンでは、いくつかの違いがあります。
あまり広くない店舗だからといってルームエアコンを設置すると、かえって失敗につながる可能性も出てきます。
適切なエアコン選びのために、まずは業務用エアコンとルームエアコンの違いを確認してみましょう。
単位の違い(馬力、〇畳)
ルームエアコンには「〇畳用」という表記があり、家庭で使用するエアコンを選ぶ際には、この表記が基準となります。
しかし、業務用エアコンには「〇畳用」という表記はなく、出力は「馬力」で表されます。
その理由は、同じ広さでも使用環境によって必要な馬力が異なるからです。
たとえば、オフィスと中華料理店では、同じ広さでも熱源となる厨房を備えた中華料理店の方が馬力の大きなエアコンが必要になります。
業務用エアコンの出力が「馬力」で表されるのに対し、家庭用エアコンの出力は「kw」で表されます。
馬力をkwに換算すると、1馬力は約2.8kwに相当します。
6畳用のルームエアコンの場合、出力は約3kw、12畳用のものでは約4kwです。
ルームエアコンで最も能力が大きいものは、馬力に換算すると3馬力程度ですが、業務用エアコンは20馬力に相当する大きな出力のものもあります。
▶️関連記事:業務用エアコンとルームエアコンの基礎知識と機能の比較について解説
契約する電源(単相、三相)
業務用エアコンとルームエアコンには、電源にも違いがあります。
家庭用エアコンは単相100Vまたは単相200Vであるのに対し、業務用エアコンは単相200Vまたは三相200Vです。
三相は、業務用の大型電気製品に電気を送るためのもので、コンセントの形状も異なります。
馬力の大きな業務用エアコンのほとんどは三相200Vです。
そして、電源が異なれば、電気料金の契約内容も変わってきます。
業務用エアコンの場合、基本料金が高めである代わりに1kWhあたりの電力単価が安くなるといった契約をする場合があり、結果として家庭用エアコンを設置するよりも電気代が抑えられる可能性があります。
飲食店や小売店、オフィスなどにおいては空調による電力消費が全体のおおよそ50%ほどになるといわれています。
初期費用はルームエアコンよりも業務用エアコンの方が高くなりがちですが、光熱費で考えると業務用エアコンの方が優れてるといったこともあります。
あまり広くない店舗であっても、光熱費を考慮して、ルームエアコンだけでなく業務用エアコンも含めて選定するのがおすすめです。
▶️関連記事:飲食店やオフィス、倉庫や工場などで使う業務用エアコンを紹介
室内機の設置数
ルームエアコンの場合、室外機1つに対して室内機の数は1つです。
しかし、業務用エアコンの場合は、1つの室外機に対して複数の室内機を設置できるものがあります。
パターンとしては、室外機が稼働している際に、つながっている室内機がすべて稼働するタイプのものと、室内機ごとに個別運転ができるものの2つです。
室内機がすべて稼働するタイプの場合、たとえば室内機を3台設置し、そのうちの1台を停止するといったことはできません。
設置できる室内機については、同じ馬力のものだけになります。
エアコンの形状
ルームエアコンでは、壁に設置する壁掛け形が一般的ですが、業務用エアコンでは壁掛け形に加えて、天井から吊り下げる「天吊形」、天井内に本体を埋め込んで設置する「天井カセット形」、天井内に本体を設置し、そこから離れた場所に吹き出し口を設ける「ビルトイン形」などがあります。
天井カセット形やビルトイン形は、天井内に室内機を埋め込むため目立ちにくく、インテリアの邪魔にならないというメリットがあります。
しかし、室内や天井裏の状況によって、設置できるエアコンが異なるため、あらかじめ専門業者に現地調査をしてもらうのがおすすめです。
▶️関連記事:業務用エアコンの天井吊り・カセット・ビルトインとは?業務用エアコンの形状を詳しく解説
店舗に合ったエアコンの選び方
店舗に業務用エアコンを設置する際には、見た目だけでなく店舗に合わせた適切な馬力のものを選ぶ必要があります。
ここでは、店舗条件に合わせて業務用エアコンを選定する方法を解説していきます。
店舗の床面積でエアコンを選ぶ
業務用エアコンの最もシンプルな選び方は、床面積に合わせて選ぶ方法です。
この方法は非常にシンプルで簡単ですが、たとえばアパレルショップと厨房がある飲食店では、必要な馬力が異なります。
そのため、床面積だけでなく、業種も考慮してエアコンを選ぶ必要があります。
店舗の熱負荷でエアコンを選ぶ
部屋に出入りする熱量やその部屋内で発生する熱量のことを熱負荷といい、発生するものとして「人」「照明」「厨房」「日光」などが挙げられます。
この熱負荷が大きいほど、エアコンに負荷がかかりますので、熱負荷が大きい店舗であれば、馬力の大きなエアコンが必要となります。
熱負荷の計算は、専門業者にしてもらう必要がありますが、店舗にぴったりな出力が選べるというメリットは大きいです。
店舗に合う形状のエアコンを選ぶ
業務用エアコンには、先程もご紹介した「壁掛け形」「天吊形」「天井カセット形」「ビルトイン形」などの形状があります。
たとえば天井カセット形には吹き出し口が1つ、2つ、4つのものがあります。
吹き出し口が多ければその分室内全体を効率的に冷暖房できますが、室内の形状や環境によって、吹き出し口の数は異なります。
また、店舗に合ったエアコンは、馬力だけでなく設置する環境によってもさまざまです。
次に、業種と業態に合わせたエアコンの選び方について解説していきます。
▶️関連記事:業務用エアコンの種類とは?形状やタイプ別に業務用エアコンを解説!
業種・業態に合わせたエアコンの選び方
ここからは業種・業態ごとに、エアコンの選び方を「飲食店」「理美容室」「商店」の3パターンに分けて、解説していきます。
飲食店、厨房の場合
ガスコンロやオーブンなどの熱発生源がある飲食店にエアコンを設置する場合は、広さだけでエアコンを選ぶと失敗しやすいです。
厨房に設置するエアコンは、油や煙で汚れやすいため、ステンレス製で汚れを落としやすい厨房用エアコンがおすすめです。
また、コンパクトな店舗においては、エアコンが露出して設置してあると圧迫感を感じやすいといった点があります。
天井カセット形4方向は本体を天井内に埋められますので、インテリアの邪魔にもならず、業務用エアコンの中でも導入件数の多い形状です。
インテリアや席の配置によっては壁掛け形置でもよいかもしれません。
ビルトイン形も目立たない点ではカセット形と同様のメリットがありますが、ビルトイン形は本体と吹き出し口を離したい場合に有効なものであるため、コンパクトな店舗ならあえてビルトイン形を選ぶメリットはあまりなく、天井カセット形がおすすめです。
設置するエアコンの馬力の目安として「算出基準負荷冷房」と呼ばれる、室内の広さと使用環境に合わせて設けられた基準があります。
「算出基準負荷冷房」をもとにした、飲食店に設置するエアコンの馬力の目安は以下の通りです。
- ・11~21㎡の店舗なら1.5馬力
- ・15~29㎡の店舗なら2.3馬力
- ・22~42㎡の店舗なら3馬力
- ・38~74㎡の店舗なら5馬力
美容院、理容室の場合
美容室や理容室において、来店者は定位置に長時間座ったままになります。
そのため、人に直接エアコンの風が当たらないように風向きが調整できるものや、人感センサーがついているものがおすすめです。
理美容院はドライヤーを使用することで室温が高くなりやすいため、少し馬力が大きいものが必要になる場合もあります。
また、エアコンの形状については、店舗の雰囲気を妨げないカセット形のものが多く採用されています。
理美容院の場合「算出基準負荷冷房」をもとにした店舗面積ごとに必要な馬力の目安は以下の通りです。
- ・14~17㎡の店舗なら1.5馬力
- ・19~24㎡の店舗なら2.3馬力
- ・28~35㎡の店舗なら3馬力
- ・48~61㎡の店舗なら5馬力
商業施設、商店の場合
商業施設は1日に不特定多数の人が出入りします。
人の出入りが多くなればその分外気が入ってきて、室内の空気が外に逃げるため空調効率は悪くなってしまいます。
また、生鮮食品店や精肉店にある大型の冷蔵ショーケースは熱負荷が高くなる傾向にあります。
店舗の規模によりますが、このような商業施設や商店では、馬力の大きな業務用エアコンが適しているといえます。
一方でアパレルショップや、宝石店、日用雑貨品などを販売している一般商店では、それほど大きな馬力は必要ありません。
一般商店の場合の「算出基準負荷冷房」をもとにした、店舗面積ごとに必要な馬力の目安は以下の通りです。
- ・17~38㎡の店舗なら1.5馬力
- ・24~53㎡の店舗なら2.3馬力
- ・35~76㎡の店舗なら3馬力
- ・61~133㎡の店舗なら5馬力
▶️関連記事:各業種に適した業務用エアコンの性能を解説
エアコンの選択ミスがお客様のクレームに繋がる
業務用エアコンの選択には、業種や業態に合わせることが重要であるとお伝えしてきました。
しかし、エアコン選びにおけるミスは、馬力不足によるものだけではありません。
業務用エアコンはルームエアコンに比べて出力が大きいため、店舗規模によっては「馬力が過剰」になってしまうケースもあります。
業種や広さに沿わない馬力の大きなものを設置してしまうと、微妙な風量調整や温度調整が難しく、お客様にとっては「寒すぎ」「暑すぎ」といった不快感につながる恐れがあります。
出力の大きなものであれば問題ないと考えるのではなく、店舗に合わせたエアコン選びが大事になってきます。
店舗の空調はバランス重要
お客様を迎える店舗では、空調の効きが悪かったり逆に効きすぎたりすることがないよう、室内環境のバランスが重要です。
また、近年では換気も重要視されています。
通常のエアコンには換気機能が備わっていないため、換気を積極的に行いたい場合には、エアコンとは別に換気設備を導入する必要があります。
そこでおすすめなのが、給気と排気を1台でまかなえる「高機能換気設備」です。
高機能換気設備には「熱交換システム」が搭載されています。
熱交換システムが搭載された高機能換気設備なら、夏は室内の冷えた空気を利用して入ってくる外気を冷やし、冬であれば暖まった室内の空気を利用して、冷たい外気を暖めてから室内に入れる仕組みになっています。
熱交換は、室内の冷たい(暖まった)空気を排気する際に給気する空気に移して行われます。
熱交換システムでは空気を混ぜ合わせて熱交換を行うのではなく給気と排気の通り道が分かれており熱だけを交換する仕組みになっています。
そのため室内の空気が汚れてしまう心配はありません。
高機能換気設備は、空調効率を下げずに換気ができる点で非常に大きなメリットがあります。
空調設備の設置計画は慎重に
業務用エアコンはルームエアコンと比べて、初期費用だけでなく設置費用も高くなります。
だからこそ空調設備の導入の前には、店舗の形状や雰囲気、業種、日当たり、換気なども考慮して綿密な計画を立てる必要があるといえます。
店舗の広さだけで選ぶとミスにつながりやすいため、必ず設置計画の段階から、専門業者に現場調査や見積もりをしてもらうことをおすすめします。
まとめ
業務用エアコンの選定にあたっては、面積だけでなく、店舗の形状、業態なども考慮する必要があります。
10年以上使用することも珍しくない業務用エアコンでは、エアコン選びだけでなく、設置後のメンテナンスも重要です。
オーソリティ空調では、お客様にぴったりの業務用エアコン選びから、設置後のアフターフォローに至るまでを一貫して承っております。
ぜひお気軽にお問合わせください。
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