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建築物省エネ法とは?非住宅や倉庫・工場などの増改築に伴う省エネ基準を解説
2025.06.20 空調機器導入ノウハウ

Q. 建築物省エネ法とは何か、どのような建物が対象になるの?
A. 非住宅(工場・倉庫など)を含むすべての新築・増改築建物に適用され、省エネ性能の確保が義務化されています。
Q. 2025年・2027年の改正では何が変わるの?
A. 適用対象の拡大、省エネ基準の強化、空調設備(エアコン)に関する基準改定が進められます。
Q. 増改築や空調機器の更新時に何を準備すべき?
A. 届出や審査への対応、設備選定の見直し、補助金や相談窓口の活用が必要です。
温室効果ガスの削減と省エネルギー化を進めるため、日本では建築物のエネルギー性能に対する規制が年々強化されています。
とくに「建築物省エネ法」は新築に限らず、工場や倉庫といった非住宅の増改築にも深く関係する法律です。
空調設備の導入や更新を検討する際には、この法律に対応した計画が求められます。
この記事では建築物省エネ法の基本的な仕組みから、2025年および2027年の法改正内容、そして空調機器の省エネ基準とその対応策まで解説していきます。

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目次
建築物省エネ法とは
建築物省エネ法は、正式には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」と呼ばれ、建物の省エネルギー性能を確保することを目的とした法律です。
日本では地球温暖化対策の一環として、住宅や非住宅に関わらず、建物のエネルギー使用を効率化するための法整備が進められてきました。
この法律は建物の設計段階での断熱性能や空調・照明といった設備の効率性に注目し一定の基準を満たすことを求めています。
また、建築確認申請時や増改築の際には、省エネ基準の適合性を示す書類提出も必要になります。
特に最近では非住宅用途である工場や倉庫にも広く適用されるようになり、多くの事業者にとって対応が急務となっています。
対象となる建築物の種類と条件
建築物省エネ法の対象になるのは、床面積が300㎡を超える新築建築物が原則です。
ただし2025年の改正により、これまで対象外だった小規模な建物も一定条件下で適用範囲に加わる予定です。
具体的には事務所・病院・商業施設・工場・倉庫など、住宅以外の「非住宅用途」の建物が対象です。
加えて増改築においても、その工事部分の床面積や設備の更新内容によっては、省エネ適合の確認が必要になる場合があります。
たとえば、大型倉庫を部分的に改修し空調設備を刷新するケースでは法的なチェックが必要となることもあります。
非住宅建物における適用のポイント
非住宅用途の建築物では、使用目的や面積の規模、そして工事の種別によって求められる省エネ対応が異なります。
ここでは、非住宅への適用条件を整理し、具体的にどのようなケースで何をすべきかを解説します。
工場・倉庫などの対象範囲
工場や倉庫といった非住宅建築物も、床面積や用途に応じて建築物省エネ法の適用を受けます。
たとえば、冷蔵倉庫や製造ラインを持つ工場などは、空調・換気・照明機器の使用が多く、省エネ性能の管理が求められます。
また、使用時間帯が長く電力消費の多い物流施設や配送センターでは設備機器のエネルギー効率が業務全体のランニングコストにも影響を与えるため、早めの法対応が有効です。

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新築と増改築で異なる対応内容
新築の場合、建築確認申請と同時に省エネ適合性判定が必要です。
つまり、設計段階で法基準を満たしていないと建築そのものが許可されません。
一方、増改築については、改修範囲と床面積によって対応が分かれます。
たとえば、「空調設備の一新」や「内装変更を含む全面リノベーション」など、建物の機能やエネルギー消費に大きな影響を与える工事では届出や審査が求められます。
規模によって基準が異なる
適用される基準は、建物の床面積と用途によって異なります。
300㎡を超える非住宅建物では、原則として「省エネ基準適合義務」が課されます。
一方で、300㎡以下の建物についても、将来的に段階的な義務化が検討されています。
また、延べ床面積2,000㎡を超える場合には、「適合性判定制度」の対象となり、第三者機関の審査を受けなければなりません。
これにより、設計者や建築主はより厳密な省エネ対応を求められるようになります。
2025年改正の内容と影響
2025年には、建築物省エネ法の大幅な改正が予定されており、特に中小規模の非住宅建築物における規制強化が注目されています。
これまで義務化の対象外だったケースも、新たな基準のもとで届出や審査が求められる可能性が高くなります。
以下では具体的にどう変わるのか、何に備えるべきかを見ていきましょう。
適用対象の拡大と届出の義務
これまで床面積が300㎡未満の非住宅建築物については、省エネ基準の適合義務はありませんでした。
しかし、2025年の改正では300㎡未満の新築や増改築であっても、原則として省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。
これは、非住宅分野におけるCO₂排出の割合が大きいことを踏まえ、小規模施設でもエネルギー効率を意識した設計が求められるようになったためです。
たとえば、街中の小規模クリニックや事務所でも、建築確認時に省エネ性能を説明する必要が生じることになります。
そのため、設計者は設計段階から省エネ基準に沿った仕様を取り入れ、建築主もその意図や数値を理解しておく必要があります。
届出が不要だったこれまでとは違い、書類提出や適合証明の準備が新たな業務として加わる点に注意が必要です。
設備機器の省エネ性能評価の強化
改正では建築物本体の断熱性能だけでなく、設備機器のエネルギー効率もより厳密に評価対象となるよう制度が強化されます。
特に空調、換気、照明、給湯といった主要設備においては、個別の消費エネルギー量まで設計段階で算出・評価される必要があります。
これにより、単に「断熱材を厚くする」だけでは基準を満たすことができなくなります。
たとえば、高効率の空調機器やインバータ制御付きの換気システムなど、機器そのものの性能に着目した製品選びが求められます。
一例として、従来型の業務用エアコンから最新の省エネラベル付き機器への更新を計画するケースでは、機器の年間消費電力量(APF・COPなど)を基に、省エネ適合性を証明する図書を提出する必要がある場合もあります。
このように、建物全体のエネルギー性能を「見える化」して説明できる体制が今後のスタンダードになるといえるでしょう。

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2027年改正に向けた動向と準備
2025年の改正に続き、2027年にも建築物省エネ法のさらなる強化が予定されています。
今後は設計や施工の段階だけでなく、建物の運用段階におけるエネルギー効率の持続的な改善が求められるようになります。
改正の方向性を把握し、長期的な設備投資や経営計画にどう反映させるかを考えます。
今後強化される基準の方向性
国土交通省が示している方針によれば、2027年には建築物全体のエネルギー性能基準がZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)やZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)に近づく形で段階的に引き上げられる見込みです。
たとえば、現時点での「省エネ基準適合義務」に加え、「省エネ性能の表示義務」や「長期的な性能維持の責任」を課すような仕組みが検討されています。
また、空調機器や照明設備の性能表示をより厳格にする動きも進んでおり、単なる導入時の性能だけでなく実際の使用状況や維持管理まで視野に入れた対応が必要になるでしょう。
これにより、今後は「基準を満たすための設計」から、「基準を上回る価値を提供する設計」へのシフトが求められると予想されます。

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中長期的な空調・設備戦略の立て方
改正への対応を一時的なコスト負担と捉えるのではなく、エネルギーコストの削減や業務効率化につながる投資として捉えることが大切です。
たとえば、以下のような中長期的な視点で戦略を練ることが推奨されます。
- 老朽化設備の更新計画の前倒し
改正前に対応することで補助金を得やすくなる場合があります。 - 建物全体のBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)導入
使用電力をリアルタイムで可視化し、さらなる省エネ改善が可能です。 - ZEB Ready対応の設備導入
今後の法改正や補助制度にも柔軟に対応できます。
たとえば、中小の物流倉庫を運営している事業者が2025年の法改正後に空調機器を高効率モデルへ更新し、さらにBEMSによって稼働状況を見える化することで2027年以降の法改正にも自然と適合しやすくなるといったメリットがあります。
このように、2027年改正を見据えた戦略的な対応こそが事業の持続性とエネルギー効率向上の鍵となります。
空調設備に関する省エネ基準
建築物省エネ法では建物全体の断熱性能だけでなく、使用される空調設備そのものの省エネルギー性能も重要な評価対象とされています。
とくに、業務用の建物では空調のエネルギー使用比率が非常に高く、ここでの効率化が建物全体の省エネ達成に直結します。
空調機器が果たす役割や、建物との関係について整理します。
空調設備が占めるエネルギー比率
空調設備は、非住宅建物において最も多くエネルギーを消費する設備の一つです。
特にオフィスビルや物流倉庫、工場などでは、冷暖房の頻度が高く、全体のエネルギー使用量の40〜60%近くを占めることもあります。
たとえば、真夏や真冬に冷暖房を稼働させ続けると、古い設備では電力消費が一気に上昇し電気代も跳ね上がります。
一方で高効率型の空調設備に入れ替えることで、年間の光熱費を20〜30%程度削減できるケースもあります。
このように空調機器の選定は「単なる設備導入」ではなく、「長期的なエネルギー管理」の出発点となるわけです。
建築物と空調設備の関係性
建築物の構造や断熱性能が一定水準を満たしていたとしても、空調設備の性能が低ければ総合的な省エネルギー性は評価されません。
建築物省エネ法では、こうした相互関係を「一次エネルギー消費量基準」で評価する仕組みを導入しています。
具体的には、「建物の外皮性能(断熱・遮熱)」と「設備のエネルギー効率」を総合的に計算し、設計値が基準値を下回っているか(=より省エネか)を確認します。
この評価には、建築士や設備設計士が使用する「住宅・建築物省エネルギー計算プログラム(略称:Webプログラム)」などのツールが使われています。
たとえば、断熱材の等級を上げたうえで、COP(成績係数)やAPF(通年エネルギー消費効率)の高い空調機器を選定すれば、全体としての省エネ評価が大きく向上します。
したがって、設計段階から空調設備のスペックを意識することが、審査通過の重要なポイントとなるのです。
エアコンの省エネ基準とは
エアコンの省エネ性能は、建築物省エネ法における設備評価の中でも重要な位置を占めています。
特に業務用エアコンは、建物全体の一次エネルギー消費量に大きく影響するため法改正のたびに評価基準が更新されてきました。
今後の改正ポイントや機器の選定方法について解説します。
2025年・2027年の基準改正のポイント
まず押さえておきたいのは、2025年と2027年に段階的に省エネ基準が引き上げられるという点です。
これにより、これまで適合とされていた空調機器が、将来的には基準を満たさない「旧式」と判断される可能性があります。
たとえば2025年の段階では、COP(冷房能力を消費電力で割った数値)やAPF(通年エネルギー効率)の基準値が業務用機器に対して引き上げられます。
さらに2027年にはエアコンのサイズや用途別に細かく区分され、より精緻な基準で判断されることが見込まれています。
このような基準の引き上げは単なる法令対応だけでなく、エネルギーコストの抑制やカーボンニュートラルへの貢献といった経営的なメリットにも直結します。
業務用エアコンの対象と評価項目
業務用エアコンには壁掛け型・天井埋め込み型・床置き型などさまざまなタイプがありますが、定格出力が2.8kWを超える機器は原則として評価対象となります。
評価の際に確認すべき指標は、以下のような項目です。
評価項目 | 内容 |
---|---|
COP | 消費電力あたりの冷暖房効率 |
APF | 年間を通じたエネルギー効率の平均値 |
JIS規格対応 | 日本工業規格に基づく性能評価 |
省エネラベル表示 | 経済産業省・資源エネルギー庁の指針に準拠 |
これらは機器のカタログや仕様書に記載されており、設計時点での確認が可能です。
改正基準に対応する機器の選び方
改正後の基準に適合するためには、単に「新しい機器を選べばよい」というわけではありません。
重要なのは、建物の使用環境や設置条件に合わせて、最適なスペックの機器を選定することです。
たとえば、夏季に高温になる倉庫では、高外気温下でも安定した冷房能力を維持できるモデルが求められます。
また、複数の室内機を持つビル用マルチエアコン(VRFシステム)は、部分負荷時の性能が評価の鍵となります。
このように環境条件と設置場所を踏まえながら、省エネ性能の高い製品を選ぶことが法令遵守だけでなく、実務上のコスト削減にもつながります。

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カタログ表記と選定時の注意点
空調機器の省エネ性能を確認する際はメーカーのカタログや仕様書に記載された「APF」「COP」などの数値に加え、運転条件や対象空間の広さとのマッチングも重要です。
たとえばAPFが高くても、使用頻度や稼働時間が見込みより大きく異なる場合、実際の省エネ効果は期待どおりにはなりません。
そのため、実負荷運転における効率(実効APF)にも注目する必要があります。
また複数メーカーを比較する際には、第三者認証の有無やJIS規格への適合状況も参考になります。
信頼性の高いデータをもとに選定することで、審査時の書類作成や事後対応のリスクも軽減できます。

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増改築時に求められる省エネ対応
建築物省エネ法は新築だけでなく、「増築」や「改築」、「大規模な修繕・模様替え」にも対応を求めています。
とくに非住宅の建物においては空調設備の更新を含む工事を行う際、省エネ基準に適合しているかを確認する義務が発生する場合があります。
以下からは、増改築時に必要な具体的な対応や基準について解説します。
届出や審査の具体的な流れ
増改築に該当する工事を計画する場合、まずは建物の用途・規模・工事内容を確認し、省エネ法の届出対象となるかを判定します。
対象であれば、着工前に「省エネ計画の届出書」や関連図書を所轄の建築主事に提出する必要があります。
提出された計画は、省エネ基準(一次エネルギー消費量基準など)への適合性について審査されます。
このとき、空調や照明の選定根拠、断熱材の仕様などを記載した設計図書や計算書が必要です。審査に合格すれば、正式に着工することができます。
届出を怠ると工事の中止命令や是正勧告の対象になる可能性もありますので、建築士や設備設計者と連携して、準備段階から制度に即した計画を整えておくことが重要です。
対象となる増改築工事の定義
建築物省エネ法において増改築に該当する工事とは、以下のようなケースが挙げられます。
- 建物の一部を取り壊し、増床・再構築する工事
- 空調・換気・照明などの主要設備を一新するリノベーション
- 建物用途を変更する大規模な模様替え(例:倉庫→事務所)
これらの工事では、省エネ性能の観点から新たに基準を満たす設計が求められます。
ただし、屋根の葺き替えや内装仕上げの張替えなど、エネルギー性能に影響を与えない軽微な修繕は対象外とされることが一般的です。
対応が必要なケースと不要なケース
判断が難しいのは、「設備の一部更新」が行われる場合です。
たとえば、次のような工事は対応が分かれます。
工事内容 | 届出の要否 |
---|---|
古い空調設備の全台入れ替え | 必要(大規模な変更) |
エアコン室外機1台のみ交換 | 不要(軽微な更新) |
倉庫の断熱改修+照明設備の更新 | 要確認(範囲による) |
外壁塗装や屋根防水のみ | 不要(省エネに無関係) |
このように、工事の規模や建物全体への影響度合いに応じて対応義務の有無が変わるため、早い段階で専門家と相談することが推奨されます。
倉庫・工場での実務的な対応例
倉庫や工場のような非住宅建物では、業務用空調の導入や改修にあたって、建築物省エネ法への対応が必要になる場面が増えています。
しかし、現場ごとの状況や制約も多いため、制度だけでなく「現実的な対応の進め方」を知ることが重要です。
ここでは実務レベルでの流れや関係者の役割を整理します。
更新・改修工事における手順
たとえば築20年の工場で、老朽化した空調・照明を高効率設備に更新するケースを想定しましょう。
このような場合、以下のようなステップで進めるのが一般的です。
- 建物・設備の現状把握
断熱材の劣化状況、既存設備の性能、年間のエネルギー使用量を調査。 - 設計者との打ち合わせ・省エネ計算
Webプログラムなどを用いて、計画後の一次エネルギー消費量を計算。 - 届出の準備と提出
省エネ基準に適合する設計を元に届出書を作成し、審査機関へ提出。 - 改修工事の実施
高効率エアコン・LED照明などの機器設置、断熱補強などを実施。 - 完成後の報告・運用開始
変更点を記録し、省エネ効果を定期的にモニタリング。
このように計画・設計・施工・運用の各段階で適切な手順を踏むことが、制度対応と省エネ効果の両立には欠かせません。
設計・施工業者の役割と協力体制
実務で要となるのは、設計者・施工業者・設備メーカーとのスムーズな情報共有です。
- 設計者:設備選定の際、法基準を満たす仕様を設計図に反映。省エネ計算や届出書作成も担当。
- 施工業者:図面通りに正確な設置・施工を行い、必要な性能が発揮されるよう現場を管理。
- 設備メーカー:製品選定時に省エネ性能データや第三者認証情報を提供し、選定支援を行う。
たとえば、空調更新時に業者から提供されるAPF値やJIS適合情報を元に、設計者が省エネ計算を実施することでスムーズに適合確認が進みます。
「誰がどこまでを担うのか」を事前に明確にすることが、対応の抜け漏れを防ぐコツです。
よくある質問
建築物省エネ法に関する相談は年々増加しており、特に非住宅の建物オーナーや工事担当者からは「判断に迷うポイント」への質問が多く寄せられます。
ここでは、実務の現場でよくある疑問にわかりやすくお答えします。
建築物省エネ法に違反すると罰則はあるの?
はい、違反が確認された場合には、是正命令や勧告、さらに公表措置が取られる可能性があります。
たとえば、省エネ基準に適合しない建物を申請せずに建築・使用した場合、建築主はその事実を是正するよう求められ、従わない場合には事業名が官報に公表されるケースもあります。
ただし、悪意のない記載ミスや軽微な不備であれば、事前に所轄機関と相談し修正対応することで問題が回避できることが多いです。
早期相談と丁寧な届出が最善のリスク回避策といえます。
空調設備を更新するだけでも基準を満たす必要があるの?
ケースによります。小規模な部品交換や故障による一部機器の更新であれば、省エネ法の届出対象にはなりません。
しかし、既存空調システムの全体更新や、複数設備の同時更新など大規模な工事の場合は、適用の可能性が高まります。
判断が難しい場合は設計者や設備メーカーに相談し、一次エネルギー消費量がどれほど変わるかをシミュレーションしてもらうのが確実です。
増改築の定義にはどこまで含まれるの?
「増改築」とは建物の物理的拡張や構造的変更だけでなく、機能や用途の大幅な変更を含むと定義されます。
たとえば、倉庫の一部を事務所や休憩スペースに改修する場合も工事の規模によっては省エネ基準の適用対象になります。
判断基準は、「その工事が建物のエネルギー消費性能に影響を与えるかどうか」です。
内部の仕上げ変更のみなら対象外ですが、空調や照明、断熱性能に関わる変更がある場合は注意が必要です。
対応しないと建築確認は下りないの?
はい、省エネ法の適合判定が必要な建築物において、届出や適合証明が不十分なままだと建築確認が下りません。
特に2025年以降は対象範囲が拡大され、これまで対象外だった建物も審査の対象となります。
そのため、設計初期段階で「この建物は届出が必要か?」という確認を必ず行い、必要に応じて専門の省エネ設計士や登録建築士に支援を依頼するとスムーズです。
既存設備の流用は可能か?
基本的には可能ですが、増改築後の建物全体で省エネ基準を満たしているかが重要です。
たとえば、古い空調設備をそのまま使用する場合でも、断熱補強や照明更新など他の要素との組み合わせによって、全体の一次エネルギー消費量が基準を下回れば問題ありません。
一方で、流用する機器の性能が著しく劣っていると、全体での適合が難しくなる可能性があります。その際は、部分的な更新やBEMSの導入による補完的対策が有効です。
まとめ
建築物省エネ法は、これまで以上に幅広い建築物を対象とし、非住宅の倉庫や工場、事務所においても省エネルギー性能の確保が求められる時代へと進化しています。
2025年・2027年の改正によって対象範囲や評価基準が大きく変わるため、これまで対応が不要だった施設も例外ではなくなります。
特に空調設備は建物全体のエネルギー消費量に大きく関わる要素であり、高性能な機器選定と建物設計の工夫が欠かせません。
また、増改築時の届出や審査、補助金活用といった実務対応についても早い段階で設計者や設備業者と連携しながら進めることが重要です。
「法令対応」と聞くと難解に思えるかもしれませんが、正しい知識と専門家の支援を得れば、建物の価値向上とコスト削減を同時に実現することも可能です。
ぜひ今回の記事をきっかけに、自社の建物運用や設備計画を見直してみてください。
空調設備の設置から、内装設計・工事を含む空間デザイン、そして最新設備による快適な空気環境の施工プランまで。
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