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店舗を開業される方必見!エアコン・換気などの空調設備の入替や機器の選び方を解説
2025.12.05 空調機器活用ノウハウ

これから店舗の開業を目指している方や店舗を開業される方は、物件探しや店舗の内装デザインは何にしようかと多くのことを考えているかと思います。しかし、ここで1つ意外と見落とされがちだが、開業後の運営とコストに最も大きく影響する設備があります。それが、エアコンや換気扇などの空調設備です。
ふとした瞬間に、お客様が「店内がなんだか暑いな」「このお店、油の匂いがこもっているな」と感じたことはないでしょうか。こうした快適性の欠如はお客様の滞在時間を短くし、結果的に売上を奪う原因になりかねません。特に飲食業や理美容業などでは、熱や臭気、衛生面の管理は経営の根幹に関わってきます。
この記事では空調設備に関する知識が全くない方でも、「だから何をすればいいのか」「どういう基準で選ぶのが正解なのか」が明確にわかりやすく解説します。物件契約前の現地調査から、業種に合わせた馬力の選び方、そして法規制への対応まで解説します。
目次
失敗しない!物件契約前に確認すべき空調設備の最重要項目

空調設備に関する失敗は物件契約後に発覚すると、数百万円単位の追加工事費用が発生するリスクを伴います。そのため、快適な店舗運営のためには物件契約前に空調設備の仕様を徹底的に確認することから始まります。
特に専門性の高い電気設備や設置スペースについては、後から変更が効きにくいため初期段階での確認が非常に大切です。
契約前に確認必須な電源の種類と容量
「エアコンの電源なんて、コンセントに挿すだけだろう」と考えるのは、家庭用エアコンの常識です。しかし、店舗やオフィスで使う業務用エアコンの多くは、家庭で使う単相(たんそう)電源とは異なる三相(さんそう)電源を使っています。
この二つの違いは、車のガソリンと軽油くらい根本的に違うと考えるとわかりやすいでしょう。
単相電源は一般的な家庭のコンセントに使われる電気で、100Vや200Vがあり、比較的容量の小さな電化製品に使われます。一方、三相電源は200Vで、パワーが必要な業務用機器や大型の産業機器を動かすための電気です。
パワーが段違いなので三相電源がない物件で業務用エアコンを導入しようとすると、電力会社に依頼して新たに三相電源を引き込む工事が必要になり、これが数十万円〜百万円以上のコストになることがあります。
もし内見時に建物の電気配線図や電気容量の記載が見当たらない場合は、必ずオーナーや管理会社に「三相200Vが引き込まれているか」「契約容量は何アンペアか」を確認しましょう。この確認を怠ると、契約後に「業務用エアコンが動かない」「電気工事で予算オーバーしてしまう」などという悲劇につながりかねません。
参考記事: 店舗に最適な業務用エアコンを選ぶには? 選定方法と注意点
既設の業務用エアコン・換気設備と入替の目安
内見した物件にすでに古い業務用エアコンや換気扇が設置されている場合「それをそのまま使えば問題ない」と感じるかもしれません。しかし、その機器が残置物として残されている場合、その後のメンテナンスや交換費用、さらには法的な責任をあなたが負うことになります。
エアコンは一般的に10年〜15年程が交換の目安とされており、特に古い機器は冷暖房の効率が非常に悪く、電気代が最新機種の2倍以上になることも珍しくありません。
さらに重要なのがフロン排出抑制法の存在です。業務用エアコンには地球温暖化の原因となるフロンガスが使われており、その管理責任は機器の所有者にあります。古い機器をそのまま使う場合、この法律に基づいた定期的な簡易点検などの義務が発生します。
実際、この法律を知らずに古いエアコンを使っていて、点検義務違反を指摘されるケースも増えてきています。そのため、もし残置物のエアコンが設置後10年以上経過している場合は故障による営業停止リスクやランニングコスト、法規制対応を考慮して、物件契約前に撤去・入替費用を見積もりに組み込むことも必須ではありませんが、検討しておくとよいでしょう。
業務用エアコンの室外機とダクトの設置スペースの確認
空調設備の設置で意外な盲点になるのが室外機とダクトのスペースです。業務用エアコンは家庭用と比べて室外機が非常に大きく、その設置場所が建物の裏側や屋上など、簡単に見られる場所ではないことが多々あります。
もしその物件が2階以上にある場合や、路面に面していない場合、室外機を置くための専用の設置スペースが確保されているか、あるいは設置スペースまでの配管・配線ルートがあるかを確認しなければなりません。
また、特に飲食店などでは換気用の厨房ダクトが天井裏や壁を通って、建物の外へ排出される構造になっています。既存のダクトが残っていたとしても、あなたの業態(例:中華料理店のように油煙が多い業態)に対して能力が不足していたり、老朽化で穴が開いていたりする可能性があります。
既存の室外機やダクトの有無、そしてそのメンテナンスのしやすさを物件契約前に専門業者と一緒に確認することで、「室外機を置く場所がない」「ダクトが詰まっていて使い物にならない」といった問題を防ぐことができます。
参考記事
業務用エアコンとは?業務用エアコンの特徴と設置工事について解説
空調設備のダクト工事とは? ダクト工事の大切なポイントも解説
業種別で変わる業務用エアコンの馬力と負荷計算

業務用エアコンの能力を測る単位を馬力と言います。しかし、「広い店だからとりあえず大きな馬力を選ぶ」という単純な選び方ではコスト過剰になったり、逆に能力不足で暑い店になったりします。店舗の空調計画を成功させる鍵は、あなたの店舗特有の「熱負荷」を理解し、それに合った馬力を選ぶことです。
店舗の快適性を左右する空調負荷とは
私たちが家庭用エアコンを選ぶ際、「〇畳用」という基準で考えがちですが、業務用エアコンは「〇畳用」ではなく馬力で能力を表します。なぜなら同じ広さの部屋でも、その部屋で発生する熱の総量(空調負荷)が全く違うからです。
空調負荷とは「その空間を快適な温度に保つのに必要な冷房・暖房のエネルギー量」のことであり、主に以下の要素で構成されます。
- 人の発熱: お客様やスタッフの体温から出る熱。人が多いほど負荷は増えます。
- 照明・機器の発熱: 店内の照明やレジ、厨房機器(オーブン、コンロなど)から出る熱。厨房がある飲食店はこれが非常に大きくなります。
- 外気の熱: 窓や壁、ドアの開閉を通じて入ってくる日射や外気温の影響。
- 換気による熱: 換気のために外気を取り込む際に、外気の温度が室温に影響を及ぼすこと。
たとえば、同じ40平方メートルの広さでも「事務作業のみを行うオフィス」と「鉄板焼きを行う飲食店」では、後者のほうが厨房機器や多くの人の熱が加わるため、空調負荷は格段に大きくなります。
この負荷を正確に把握せずに選ぶと、夏場にエアコンをフル稼働させても効きが悪く、「うちのエアコンは壊れているのでは?」と悩むことになります。
参考記事:店舗を開業する際の業務用エアコンの選び方とエアコンの設置工事について解説
業種・業態別 推奨する馬力の目安
前述の空調負荷の大きさは、業種によって大きく変わります。したがって、エアコンの馬力選定においては、「どのくらい熱を出す業態なのか」が最も重要な判断基準となります。一般的なオフィスや衣料品店と、調理場から常に熱が発生する飲食店を同列に考えてはいけません。
例えば、飲食店は厨房からの熱が加わるため、同じ広さの物販店やオフィスと比べて、1.5倍から2倍近くの馬力が必要になることが一般的です。また、理美容室もドライヤーやパーマの薬剤などによる熱や湿度の発生が多いため、負荷が大きくなります。
これらの業態では、負荷を考慮して計算した「適切な馬力」を選ぶことで、お客様に「この店はいつ来ても快適だね」と感じてもらえるようになります。
参考サイト:業務用エアコンの1馬力は何畳に最適?快適に過ごすために室内に合わせて馬力を選ぼう! – 業務用エアコンの取付工事と空間デザインは【ReAir-リエア-】
店舗面積と業種別・必要馬力早見表
| 店舗の広さ(目安) | 熱負荷(小) 例:物販店、オフィス |
熱負荷(中) 例:理美容室、喫茶店 |
熱負荷(大) 例:飲食店(厨房あり) |
|---|---|---|---|
| 15〜20 ㎡(約10〜12畳) | 1.5馬力 | 2馬力 | 2.5馬力 |
| 20〜30 ㎡(約12〜18畳) | 2馬力 | 2.5〜3馬力 | 3馬力以上 |
| 30〜40 ㎡(約18〜24畳) | 2.5馬力 | 3〜4馬力 | 4馬力以上 |
| 40〜60 ㎡(約24〜36畳) | 3馬力 | 4〜5馬力 | 5馬力以上 |
参考: 1馬力は約2.8kWに相当します。この表はあくまで目安であり、窓の大きさや建物の断熱性で変動します。必ず専門業者に空調負荷計算を依頼することが推奨されます。
業務用エアコンの選定基準と種類

業務用エアコンを選ぶ際、「とにかく馬力が大きいものを」と考える人がいますが、それだけでは不十分です。設置場所の美観、メンテナンスのしやすさ、そしてイニシャルコストとランニングコストのバランスを考慮し、業務用エアコンとルームエアコンそれぞれの特性を理解することが大切です。
ルームエアコンを店舗で使うメリットとデメリット
小規模な店舗や熱負荷が小さいオフィスでは、「家庭用のルームエアコンで十分ではないか」という疑問が出てきます。初期費用を抑えたい気持ちは痛いほどわかりますが、ここでは業務用エアコンとの違いをしっかりと確認しておきましょう。
ルームエアコンのメリット
まず、ルームエアコンの最大のメリットは初期導入コストの低さと入手のしやすさにあります。業務用エアコンと比較して本体価格が安く、工事も比較的シンプルで済むためイニシャルコストを大幅に削減できます。
また、単相100Vや200Vで動くため三相電源がない物件でも導入できる点も強みです。もしも、小さな整体院やほとんど熱源がない小規模な事務所を開業するなら、ルームエアコンの選定は現実的でしょう。
ルームエアコンのデメリット
しかし店舗運営の視点から見ると、ルームエアコンにはいくつかの致命的なデメリットがあります。1つは耐久性です。ルームエアコンは一日数時間の利用を想定して設計されているのに対し、店舗は一日10時間以上の連続運転が基本です。そのため業務用エアコンに比べて寿命が短く、故障のリスクが高くなる可能性があります。
また冷暖房の能力が低いため、店舗全体をムラなく快適にするのが難しく、結果的に電気代が高くつきやすいというランニングコストの課題も抱えています。店舗などの場合、お客様の出入りが多い店舗や熱負荷が高い業態でのルームエアコンの採用は、「安物買いの銭失い」になりかねません。
業務用エアコンを店舗で使うメリットとデメリット
では、業務用エアコンはなぜ店舗運営に適しているのでしょうか。その特性を知ることで、初期投資の意味を理解できるはずです。
業務用エアコンのメリット
業務用エアコンのメリットはなんといってもパワー(馬力)と耐久性です。三相電源を使用することで、ルームエアコンとは比べ物にならない大容量の冷暖房能力を発揮し、広い空間や熱負荷の高い環境でも安定した温度を保つことができます。また、設計段階から長時間の連続運転を想定しているため、寿命が長く、故障頻度が低いのも大きな利点です。
さらに、電気料金の契約形態も一般的に業務用電力契約となり基本料金は高くなるものの、使用電力量あたりの単価が安く設定されることが多く電気を多く使う店舗ほど、結果的にランニングコストを抑えられる設計になっています。
業務用エアコンのデメリット
業務用エアコンのデメリットは初期導入費用の高さにあります。本体価格が高く、設置工事も複雑になる傾向があります。特に三相電源が引かれていない物件では、先述の通り電気工事に大きな費用がかかります。
また機器の構造が複雑なため、故障時の修理費用やフロン排出抑制法に基づく点検・メンテナンス費用も考慮する必要があります。これは、店舗運営の固定費として計画に組み込むべき要素です。
業務用エアコンの代表的な形状と設置箇所
業務用エアコンは家庭用の壁掛け形だけでなく、店舗の美観や構造に合わせた様々な形状があります。
天井埋込カセット形(4方向・2方向)
最も店舗で採用されているのが天井埋め込みカセット形です。これは室内機本体を天井裏に埋め込み、パネルの吹き出し口だけを天井に露出させるタイプです。美観を損なわずインテリアの邪魔にならないため、デザインにこだわるアパレル店やカフェでよく選ばれます。
4方向の吹き出し口を持つタイプは広い空間全体に均一に風を送るのに適していますが、2方向タイプは細長い店舗や壁際に設置することで効率的に風を届けることが可能です。どちらを選ぶかは店舗の形状と内装設計に合わせて慎重に決める必要があります。
参考記事:業務用エアコンの天井吊り・カセット・ビルトインとは?業務用エアコンの形状を詳しく解説
天井吊形・壁掛形:費用とメンテナンス性を重視する場合
天井吊形は本体を天井から吊り下げるタイプで、天井裏のスペースがない物件でも設置が可能です。工事が比較的容易でカセット形よりも導入費用を抑えられる傾向にあります。またフィルターなどのメンテナンスが床から行いやすく、清掃の手間が少ない点もメリットです。
壁掛形は、最もシンプルな構造で、費用を抑えたい場合に有効ですが、風が広範囲に届きにくいため、広い店舗の主空調としては不向きで、バックヤードや一部の小スペースでの利用が適しています。
参考記事:高機能換気設備にはどういった形状がある?
既存機器の入替時:中古品・リース導入のメリットとリスク
既存の古い業務用エアコンを入替える際、初期費用を抑えるために中古品やリースを検討することがあります。
中古品のメリットは何と言っても価格の安さです。新品の半額以下で手に入るケースも珍しくありません。しかし、その裏側には大きなリスクが潜んでいます。一つはメーカー保証がない、または非常に短いこと。そして、フロンガスの管理状態が不明な場合があることです。
すぐに故障するリスクや、フロン排出抑制法上の点検記録がないといった問題に直面する可能性があります。中古品を検討する場合は、販売業者が専門的な保証を付帯しているか、そしてフロン回収・再生を適切に行っているかを必ず確認すべきです。
一方、リースは、初期費用をかけずに最新の業務用エアコンを導入できるメリットがあります。毎月のリース料を経費として処理できるため、会計処理がシンプルになるのも魅力です。ただし、総支払い額は一括購入よりも高くなるため、キャッシュフローとのバランスを考慮して選択することが求められます。
店舗の換気設備の法規制と設計基準

空調設備の計画において、冷暖房のエアコン以上に換気設備は軽視されがちです。
しかし換気はお客様の快適性だけでなく、従業員の健康、そして何より法律に関わる重要な要素です。換気が不十分だと特に飲食店ではすぐに臭いがこもり、お客様に不快感を与えてしまうことになります。ここでは、法律に基づいた換気の重要性と具体的な対策を解説します。
建築基準法で定められた必要換気量の計算方法
換気設備を考える上で、まず知っておくべきなのが建築基準法で定められた必要換気量です。この法律は、室内の二酸化炭素濃度や汚染物質を適切に外に出すために、「1人あたりに必要な換気量」や「部屋の容積に対する換気回数」を定めています。
一般的に人が常時いる部屋では、1人あたり30立方メートル/毎時の換気量が基準となります。これは、店舗の広さや天井の高さから算出される室内容積をベースに計算されます。つまり、「窓を開けていれば大丈夫」という対策ではなく、機械換気設備を用いてこの基準値を満たすことが法律上求められる場合が多いということです。
この必要換気量を満たしていないと、シックハウス症候群の原因になるような化学物質が滞留したり、お客様のいる空間の二酸化炭素濃度が上昇し、眠気や集中力低下を引き起こしたりするリスクがあります。開業後の検査で指摘を受け、急遽換気扇の増設工事を行うことにならないよう、設計段階でしっかり計算しておくことが重要です。
参考記事:シックビル症候群とは?原因と対策、シックハウスとの違いを解説
飲食店・厨房で必須のダクト換気設計と煙・臭い対策のポイント
特に飲食店を開業される場合、客席とは別に厨房の換気を厳密に考える必要があります。厨房にはガスコンロやオーブンなどの大量の熱源があり、さらに油煙や調理臭が発生します。これらの熱や臭いを適切に排気するための設備が厨房フード(レンジフード)とそれに接続されるダクト換気扇です。
厨房換気で最も重要なのは排気と給気のバランスです。排気能力だけを強化しすぎると、店内の気圧が外気より低くなる負圧の状態になり客席のエアコンの風が乱れたり、ドアを開けるたびに「ヒューッ」と音が鳴ったりする現象が起きます。
逆に給気が不足すると、厨房の油煙が客席側に逆流し、服に匂いがついてしまう「煙対策の失敗」につながります。プロの設計では、排気と給気の量を調整し、調理場と客席間の気流を計算することで、匂いや煙が客席に漏れ出さない設計を行います。
既存の物件に残されたダクトが業態の油煙処理能力に対応できるか(防火対策、油の目詰まり対策など)についても、専門業者に確認してもらうべきでしょう。
参考記事:エアバランスとは? 空気環境に関係する正圧と負圧について解説
空調効率を落とさない高機能換気設備の仕組みとメリット
換気は大切だとわかっていても、「せっかくエアコンで冷やしたり暖めたりした空気を、外に捨ててしまうのはもったいない」と感じるのは当然の疑問です。真夏に換気のために窓を開ければ、冷たい空気が逃げ、熱い空気が入ってくるため、エアコンに大きな負担がかかって電気代が跳ね上がります。
この問題を解決するのが高機能換気設備、特に全熱交換器を搭載した換気システムです。全熱交換器は、汚れた室内の空気を外に排出しながら、同時に新鮮な外気を室内に取り込む際に、「排気する空気の熱(温度と湿度)」を「取り込む外気」に移し替える仕組みを持っています。
例えるなら、熱をバトンパスしているようなイメージです。これにより夏は冷房の涼しさを、冬は暖房の暖かさを逃がすことなく換気だけを行うことが可能になります。初期導入コストはかかりますが空調負荷を大幅に軽減し、ランニングコストを抑える効果があるため、一日中エアコンを使う店舗では、費用対効果が非常に高い設備投資になります。
よくある質問
Q1. 開業予定の店舗物件に古いエアコンが残っています。そのまま使えますか?
基本的にはそのまま使わず入替を強く推奨します。 古い業務用エアコンをそのまま使用すると主に3つの大きなリスクがあるからです。
- 1つ目は電気代(ランニングコスト)です。10年以上前の機種は現在の省エネ基準を満たしておらず、最新機種と比べて電気代が2倍以上になることがよくあります。
- 2つ目は故障リスクです。古い機器はいつ故障してもおかしくなく、繁忙期に故障すれば営業停止という致命的な事態を招きます。
- 3つ目はフロン排出抑制法の点検・管理義務です。所有者として簡易点検義務を負うことになり、法令遵守の面で手間がかかります。
これらのリスクとランニングコストをトータルで考えると、初期投資としての入替は最も賢明な選択と言えます。
Q2. 飲食店で厨房の熱がひどい場合、エアコンの馬力を上げれば解決しますか?
エアコンの馬力を上げるだけでは不十分です。 厨房の熱が客席に影響を与える主な原因は、換気不足と給気・排気のバランスの悪さにあるからです。
厨房で調理すると熱と煙が発生しますが、これをダクトで適切に排気し同時に新鮮な空気をスムーズに給気できていないと、熱い空気が客席側に逆流してしまいます。そのためエアコンの馬力を上げる前に、まず厨房のダクト換気扇の能力強化と排気量に見合った給気口の確保を専門業者に見てもらうことが根本的な解決策となります。
エアコンを大きくしても、熱源が解決しなければ、いつまでも店内は暑いままなのです。
Q3. 新規導入する業務用エアコンの費用を抑える方法はありますか?
費用を抑える方法として導入時期を選ぶ、リースを活用する、補助金制度を利用するという3つの方法があります。
- 業務用エアコン業者の繁忙期は夏前の5月〜8月です。この時期を避け、秋や冬など比較的閑散期に工事を依頼することで、価格交渉の余地が生まれる場合があります。
- リース契約を利用すれば、初期の大きな出費を避けて月々の均等払いにでき、キャッシュフローを安定させられます。
- 政府や自治体が実施している省エネ設備導入に関する補助金制度(例:中小企業向けの省エネ投資促進補助金など)を積極的に活用することです。
これらの補助金は専門業者が情報を持っていることが多いので、見積もり時に「補助金が使えるか」を必ず相談してみてください。
まとめ
店舗開業において、空調設備は単なる快適性を追求する機器ではなく、電気代、集客、そして法令遵守を左右する、経営の生命線です。
物件契約前に、三相電源の有無、室外機の設置スペース、既設ダクトの状態を徹底的に確認することが、追加工事費を防ぐ第一歩です。
業務用エアコンの馬力は、店舗の広さではなく、人の数や厨房の有無による「熱負荷」に基づいて選定し、能力不足やオーバースペックを避ける必要があります。
換気設備は建築基準法に基づく必要換気量を満たす必要があり、特に高負荷な店舗では高機能換気設備の導入がランニングコストの最適化に繋がります。
機器の導入・入替に際しては、フロン排出抑制法を理解し、アフターフォロー体制が整った信頼できる専門業者を選定することが、長期的な安定運営に不可欠です。
この知識を現場で活かすために、まずは内見時や契約前に、空調設備・換気設備に詳しい専門業者に現地調査を依頼することをおすすめします。彼らの専門的な視点から、物件の隠れたリスクを指摘してもらうことが、開業後の失敗を防ぐための最も安く、確実な投資となります。
快適で集客力のある店舗空間の実現に向けて、ぜひ最適な空調計画を進めてください。
参考文献
- 建築:建築基準法に基づくシックハウス対策について – 国土交通省
- フロン排出抑制法の概要(METI/経済産業省)
- 一般社団法人 日本冷凍空調工業会|統計 業務用(パッケージ)エアコン
- 業務用エアコンの電気代を節約するには?省エネのプロが秘訣を教えます| お役立ち情報 | ダイキン工業株式会社
- 空調設備のダクト工事とは? ダクト工事の大切なポイントも解説
空調設備の設置から、内装設計・工事を含む空間デザイン、そして最新設備による快適な空気環境の施工プランまで。
空調のトータルコーディネートは、AUTHORITY CREATIVE WORKSにぜひお任せください。
